第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P1-2-34] 口腔内常在細菌が口腔がんに及ぼす影響

〇戌亥 衣祝1、山﨑 亮太1、吉岡 香絵1、有吉 渉1 (1. 九歯大 感染分子生物)

キーワード:Oral cancer、Streptococcus mitis、Cancer inhibit

これまでに、主要な歯周病原細菌ががんの病態と関わることが報告されている。本研究では、口腔常在細菌であるStreptococcus mitisと口腔扁平上皮がんとの関連を明らかにする。 S. mitis ATCC49456の菌体、培養上清、または菌体をイソプロパノール処理・超音波処理・熱処理・プロテアーゼ処理したものをそれぞれ口腔扁平上皮がん株HSC-3に添加後、生細胞数の測定をWST-8で傷害細胞数をLDH assayで測定した。また、その他のStreptococcus属の菌体でも同様に実験を行った。 S. mitis菌体を添加したHSC-3は増殖が抑制された。菌液の培養上清を添加したものではHSC-3の増殖は抑制されなかった。イソプロパノール処理したS. mitis添加群では、菌生細胞数に変化はなかった。S. mitisを超音波処理したものでは超音波処理していない菌体と同程度増殖を抑制した。その一方で、熱処理、プロテアーゼ処理したS. mitis添加群では増殖の抑制がみられたが、処理していないものよりもその程度は小さかった。その他のStreptococcus属と比較し、S. mitisでは生細胞数は最も減少した。いずれも、高濃度のとき一部の細胞は傷害された。 以上からS. mitisには、HSC-3細胞の増殖を抑制する作用があることが明らかとなった。 超音波処理した菌は死滅しており、菌の生死は増殖抑制効果に影響がないことが分かった。 また、熱処理やプロテアーゼ処理をすることでその作用が減弱したことから、菌のもつタンパク質成分が重要である可能性がある。また、イソプロパノール処理で失活する成分であると考えられる。今後、菌体成分に着目し、どの成分が増殖抑制に関わるのかを明らかにしていく。