[P1-2-42] 神経周囲浸潤のメカニズム解明に向けた口腔がんのセマフォリン3関連遺伝子解析.
キーワード:口腔扁平上皮癌、神経周囲浸潤、セマフォリン3
【目的】頭頸部癌で一般的な扁平上皮癌は神経周囲浸潤(perineural invasion; PNI)の発生率が高く、PNIの発生は予後を悪化させる。近年、神経軸索ガイダンス因子として知られるセマフォリン3サブファミリー(SEMA3s)がPNIに関与することが報告されているが、口腔扁平上皮癌(OSCC)における役割については不明である。本研究では、OSCCのPNIに関わる候補分子としてSEMA3s関連遺伝子についてin silicoおよびin vitro解析を行った。【材料と方法】In silico解析用のRNA-seqデータはTCGA(Cancer Genome Atlas)より取得し、口腔癌患者のうち、PNI無し(-)とPNIあり(+)のインデックスを対象として遺伝子発現プロファイルを解析した。In vitro実験では、ヒト口腔癌由来細胞株OSC19、OSC20、HSC2、KOSC2、HO-1-u-1、ヒト歯肉由来不死化ケラチノサイトからRNAを抽出し、SEMA3sとその受容体(NRPファミリー、PLXNファミリー)を標的としてq-PCRによる相対定量を行った。【結果及び考察】RNA-seqデータの比較解析により、PNI(+)口底癌患者群においてセマフォリンシグナルの活性化が認められ、特にSEMA3Dが有意に発現上昇を示した。口腔癌細胞株のq-PCR解析では、SEMA3Dを含むSEMA3sに加えNRPとPLXNファミリーの発現レベルにも有意な違いを認め、細胞株ごとに多様な発現パターンがあることを見出した。これらの結果から、口腔癌細胞がSEMA3sのオートクリンによるシグナル伝達経路を構築している可能性、また、細胞株固有のセマフォリンシグナル経路が口腔癌のPNI活性に関与する可能性が示唆された。【会員外共同研究者】日本歯科大学生命歯学部 藤田和也。