[P2-3-07] 末梢神経損傷後の三叉神経脊髄路核におけるc-Fosおよびp-ERK誘発の変化
キーワード:中枢神経、疼痛、生理活性物質
脊髄や脳幹の侵害受容性2次ニューロンは、末梢組織の侵害刺激情報を伝達する際に、c-Fosタンパクの発現やERKのリン酸化が誘発されることが示されている。本研究ではラット舌背に侵害刺激としてカプサイシンを塗布し、三叉神経脊髄路核で誘発されるc-Fosタンパクおよびリン酸化型ERK(p-ERK)の発現が舌神経あるいは下歯槽神経損傷後にどのように変化するのかを検討した。手術を伴わないラットあるいは各神経損傷手術に対する擬似手術を施したラット舌背へのカプサイシン塗布によって多くのc-Fosおよびp-ERK陽性細胞が三叉神経脊髄路核尾側亜核で両側性に誘発された。舌背へのカプサイシン塗布により、三叉神経脊髄路核吻側亜核においても数は少ないながらもc-Fosおよびp-ERK陽性細胞の誘発が両側性に認められた。舌神経損傷後14日において、神経損傷側の尾側亜核でカプサイシン塗布によるc-Fosおよびp-ERK陽性細胞数の有意な減少が認められた。下歯槽神経損傷後14日において、神経損傷側の尾側亜核でカプサイシン塗布によるc-Fos陽性細胞数の有意な増加が認められたが、p-ERK陽性細胞数に変化は認められなかった。舌神経あるいは下歯槽神経損傷後14日において、両側の吻側亜核でカプサイシン塗布によるc-Fosおよびp-ERK陽性細胞数の有意な増加が認められた。これらの結果から、通常の侵害受容伝達においてc-Fosおよびp-ERKは同様に誘発されるが、神経損傷後の侵害受容伝達では両者の誘発に相違が認められることが明らかとなり、三叉神経脊髄路核でのc-Fosおよびp-ERK誘発における各神経損傷の異なる影響は神経障害性疼痛症状の複雑性に関与している可能性が考えられた。