第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-31] カルシウム誘導性ケラチノサイト分化におけるKLF5の発現

〇美原 希美1、今井 一志1 (1. 日歯大 生命歯)

キーワード:KLF5、細胞分化、発現制御

上皮組織の恒常性維持には基底細胞の増殖と上皮細胞の分化のバランス保持が重要であり、中でもKrüppel-like factor (KLF) 5は上皮細胞の増殖・分化バランスを直接的に制御しているが、KLF5の発現調節機構と細胞分化との関連性については不明な点が多い。これまでに、KLF5遺伝子の発現制御にCREB/ATF familyが関与することがわかっており、また、KLF5は分化誘導因子の発現や機能を阻害することで上皮細胞形質を阻害すると考えられている。本研究では、カルシウムによるケラチノサイト分化誘導におけるKLF5の発現傾向と、CREBによるKLF5発現制御と細胞分化との関連性について検討する。
ヒトケラチノサイト由来細胞株HaCaTを最終カルシウム濃度0.03 mM(0.03 mM-Ca)または0.15 mM(0.15 mM-Ca)で培養し、カルシウムスイッチ(最終カルシウム濃度1.6 mM)により最終分化誘導を行い、分化誘導前後での内在性KLF5の発現を解析した。その結果、いずれの分化誘導条件でも内在性KLF5の発現は分化誘導後に有意に増加し、内在性CREBの発現は0.03 mM-Caでのみ有意に増加した。CREB-knockout cloneを用いて同様に解析した結果、いずれの分化誘導条件でもKLF5の発現に有意な差は見られなかったが、CREBを過剰発現させると0.15 mM-CaではKLF5の発現が減少したが0.03 mM-Caでは有意に増加した。
これらの結果から、0.03 mM-Ca、0.15 mM-CaではKLF5発現に対するCREBの機能は逆転すると考えられ、カルシウムによる分化誘導過程においてCREBによるKLF5の発現制御機構が変化する可能性が示唆された。