第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月18日(月) 08:30 〜 15:50 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P3-2-17] 細胞内輸送制御分子 sorting nexin 27 はタイト・ジャンクション関連タンパクの細胞膜への輸送を介し歯肉上皮のバリア機能に関与する

〇加藤 祐太1、谷垣 慶太1、山賀 俊介1、中村 恵理子1、竹内 洋輝1、天野 敦雄1 (1. 阪大 院歯 予防歯)

キーワード:歯周病、JAM1、SNX27

【背景】
 歯周病を随伴する症候群であるダウン症候群は、21番染色体のトリソミーにより生じる。また、sorting nexin 27 (SNX27) はエンドソームから細胞膜への逆行性輸送に関与するタンパクであり、本染色体異常をもつ宿主細胞では SNX27 遺伝子発現が減少すると報告されている。一方、歯肉上皮細胞のタイト・ジャンクション (TJ) 関連タンパクも、エンドソームを経由し細胞膜へ輸送される。本研究では、TJ 関連タンパクである junctional adhesion molecule 1 (JAM1) を介して、 SNX27 が歯肉上皮のバリア機能に及ぼす影響を調べた。
【方法】
 SNX27 遺伝子に対する shRNA を発現するヒト歯肉上皮細胞を作成し、JAM1 の局在を共焦点顕微鏡で観察した。 歯肉上皮細胞層の異物透過性を調べるため、上記細胞をセルカルチャーインサート上で単層培養し、lipopolysaccharide (LPS) および peptidoglycan (PGN) からなる蛍光トレーサーをインサート上部の培地に添加した。30分後、インサート下部の培地に透過したトレーサー量を分光光度計で測定した。
【結果】
 SNX27 の発現を抑制した歯肉上皮細胞では、歯肉上皮細胞における JAM1 の局在が細胞膜から初期エンドソームに変移し、歯肉上皮細胞層の LPS および PGN に対する透過性が亢進した。この透過性の亢進は、SNX27 のノックダウンによる上記変位に抵抗性をもつ、JAM1 キメラタンパクの過剰発現により抑制された。これらの結果より、SNX27 は JAM1 の細胞膜への輸送を介し、歯肉上皮細胞のバリア機能に関与することが示唆された。このことは、21番染色体トリソミーをもつ歯肉上皮のバリア機能の理解の一助になる可能性がある。