The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

US7

「歯学基礎領域から発信する多角的アプローチからのがん研究最前線」

Sun. Sep 17, 2023 4:00 PM - 5:30 PM B会場 (123講義室)

座長:樋田 京子(北大 院歯 血管生物分子病理)、工藤 保誠(徳大 院医歯薬 口腔生命)

5:00 PM - 5:15 PM

[US7-05] Search for novel molecules that regulate oral cancer characteristics

〇Tomonori Sasahira1 (1. Dept Oral Pathol, Kagoshima Univ Grad Sch Med Dent Sci )

Keywords:口腔癌、浸潤、転移

現在、多くのがんで分子標的治療の最盛期を迎えつつあるが、本邦で口腔癌に用いられる分子標的薬はcetuximabとnivolumabぐらいであり、がん種横断型の薬剤であるpembrolizumab、entrectinibやlarotrectinibを加えたとしても、他のがんと比較して圧倒的に少ないと言わざるを得ない。また、がんの発生・増殖・浸潤・転移には多数の分子が関与しており、シグナル伝達系の一つの分子を阻害してもそれを補う経路があるため、効果が十分に発揮されないことも多い。現在の潮流に乗り遅れないようするためにも、口腔癌における分子標的診断・治療システムの構築が急がれる。  HanahanとWeinbergは、がんが発生・進展する過程において、①増殖シグナルの維持②増殖抑制の回避③細胞死抵抗性④細胞の不死化⑤浸潤・転移⑥血管新生⑦腫瘍免疫からの回避⑧エネルギー代謝の異常⑨腫瘍促進性の炎症惹起⑩ゲノム不安定化と変異という特性を獲得することを示したが、2022年にはあらたに⑪エピジェネティックな異常⑫マイクロバイオームの多型⑬細胞老化⑭分化の異常が追加された (Hallmarks of cancer)。発表者もMIA gene familyなど口腔癌の特性を規定する新たな分泌タンパクやsmall RNAを多く明らかにしてきた。2021年4月に現在の大学に異動してからは、代表的ながんゲノムデータベースであるThe Cancer Genome Atlas (TCGA)を用いた解析をする機会を得ており、包括的なゲノムプロファイリングに基づくビッグデータの活用は、新たな分子標的候補の拾い上げのために不可欠であると考える。本発表ではこれまでに明らかにしてきた微小環境の成立に関与する分子のいくつかを示し、現在行っているビッグデータを活用した研究の一部についても紹介する。