日本南アジア学会第36回全国大会

大会実行委員長挨拶

第36回全国大会開催にあたって

 今から1年前には、新型コロナウィルスのパンデミックからの脱却がようやく見通せるようになりました。しかし、2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻を開始し、世界は、平和に対する深刻な脅威に曝されることになりました。ロシアのウラジミール・プーチン大統領はウクライナに対する核攻撃の可能性をちらつかせるなど、第三次世界大戦がいつ起こっても不思議ではありません。東アジアに目を向けると、2022年10月に、中国の習近平国家主席が中国共産党の総書記として三選され、その権威主義的体制がより強固なものになりました。米国政府は、習近平国家主席が2027年までに台湾への軍事的進攻を人民解放軍に指示していると考えています。

 南アジア諸国も、ロシアや中国の動向と決して無縁ではいられません。インドは、2020年の中国との国境紛争で20人もの軍人を失っていますし、南アジア諸国を巻き込む中国政府による一帯一路構想を安全保障上の脅威と見做しています。一方で、ロシアのウクライナ侵攻に対する国連での非難決議には、インドは中国とともに棄権しています。よく知られているように、インドは、軍事技術や武器の多くをロシアに依存しています。

 平和に対する深刻な脅威に直面している世界が、今後どのようなものになるのかを展望することは、社会的にも学術的にも極めて重要であると思われます。南アジア世界においては、多様な宗教及び社会集団が相互に影響を与えながら共存してきました。南アジア世界では、「アヒンサー」(不殺生・非暴力)が最も重要な社会的規範の一つとして様々な宗教・哲学に影響を与えてきました。ガーンディーの非暴力運動はその最たる例です。南アジア世界はこのように平和主義の豊かな土壌を有しています。わたしは、南アジア世界の各分野の専門家である会員の皆様と、その平和と戦争をめぐる議論を喚起したい、と考えております。

 日本南アジア学会第36回全国大会は、2023年9月23日(土)・24日(日)に、神戸大学六甲台第1キャンパスにて開催されることになりました。昨年の第35回全国大会は、2年ぶりに対面での開催となりました。今年の第36回全体大会も対面開催を目指しております。

 これから、大会での報告を募集いたします。会員の皆様には大会での積極的なご報告を、当日には活発なご議論をお願いできればと思います。第36回大会実行委員会は、そのような場を作っていけるように、微力ではありますが最善を尽くしたいと考えております。

2023年2月26日
第36回大会実行委員長
神戸大学 佐藤隆広