The 67th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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シンポジウム4
小学生への脱タバコ教育の現状と展望

コーディネーター:稲垣幸司(愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科,子どもをタバコから守る会愛知)

[SY4-1] 小学生への脱タバコ教育の現状と展望―「タバコのない学校」推進プロジェクトの活動を振り返って

家田重晴 (中京大学スポーツ科学部,子どもをタバコから守る会愛知)

Keywords:脱タバコ教育 学校敷地内禁煙 「タバコのない学校」推進プロジェクト

Ⅰ.はじめに
 令和元年(2019年)国民健康・栄養調査結果では,成人喫煙率は,男性27.1%,女性7.6%,総数16.7%で,徐々に喫煙率が低下してきたものの,男性では小学生の親が多い年代である30代は33.2%,40代は36.5%とかなりの高率である.さらに,小学生の家族に喫煙者がいる家庭は,山形市での2019年の調査では,47.6%と半数近くに上っていた.千葉市での2019年の調査でも,41.7%の家庭に喫煙者がいた.改正健康増進法の施行により,公共施設や飲食店での受動喫煙は大幅に減少したと思われるが,このように,家庭における子どもの受動喫煙は,まだまだ心配である.条例制定などによる家庭等での受動喫煙防止対策も重要であるが,小学校からの脱タバコ教育も同様に重要だと考えられる.本稿では,「タバコのない学校」推進プロジェクトの活動を振り返えるとともに,学校での脱タバコ教育推進のための基礎となる学校敷地内禁煙の動向に関して述べる.
Ⅱ.「タバコのない学校」推進プロジェクト
 日本学校保健学会において,2002年4月に「タバコのない学校」推進プロジェクト(以下,プロジェクトとする)が発足し,全国の学校を「タバコのない学校」にするなどの目的で,学会の「青少年の喫煙防止に関する提言」の周知や関係機関・団体への脱タバコ対策推進の要望などの活動を始めた.当初のメンバーは,家田重晴,市村國夫,狩野美和,高橋浩之,中村正和,野津有司,村松常司の7人であった(所属省略).さらに,Webサイトを立ち上げて喫煙防止や学校敷地内禁煙の関係の情報を発信するとともに,新聞等の情報や質問紙調査(独自調査,および日本小児連絡協議会や子どもをタバコから守る会・愛知との共同調査)で,学校敷地内禁煙の実態把握を試みた.
Ⅲ.学校を禁煙化すべき理由
 学校を禁煙化すべき多くの理由のうち主なものを簡潔にまとめると,①喫煙防止教育の一層の充実を図るため,②教職員が喫煙しないという望ましいモデルを示すため,③禁煙・施設禁煙化の運動を家庭・地域に広げるため,④子どもや教職員の受動喫煙を防止するため,⑤喫煙者の健康リスクを減らすため,の5つになると考えられる.
Ⅳ.全公立学校の敷地内禁煙
 全公立学校(高等学校段階まで)の敷地内禁煙は,2002年4月に和歌山県などの自治体で始まった.プロジェクトの2012年調査の結果では,秋田,茨城,福井,静岡,滋賀,和歌山,山口,及び愛媛の8県(47都道府県の17.0%)に広がっていることが確認できた.また,2015年調査では,全自治体での学校敷地内禁煙は,新たに,青森,宮城,福島,富山,山梨,兵庫,徳島,沖縄の8県で達成され,16 県(34.0%)となった.その後,2019 年12月までに,岩手,山形,栃木,東京,新潟,石川,長野,愛知,奈良,島根,岡山,香川,大分,鹿児島の14都県が加わり,30 都県(63.8%)にまで増えていた1).
 文部科学省の2017年調査では,これらの他に敷地内禁煙の学校が約95%以上の都道府県が,この他,埼玉,千葉
(94.9%),神奈川,岐阜,京都,大阪,広島,佐賀の8 府県(17.0%)あった.
 「改正健康増進法」の教育機関等を原則敷地内とする部分が2019年7月に施行されたこともあり,現在ではほぼ全ての都道府県で,全公立学校の敷地内禁煙が達成されたと思われるが,明らかになっていないので,プロジェクトの最後の仕事としてこの点を確かめる必要がある.

参考文献
1) 日本学校保健学会「タバコのない学校」推進プロジェクト:自治体の動向
http://openweb.chukyo-u.ac.jp/~ieda/P-jichitai.htm