[O-38] 保健体育の教員免許状を取得する大学生の精神疾患に関する指導の意識-成人学習理論を用いた分析より-
Keywords:教員養成、、
平成30年改訂の高等学校学習指導要領では,科目保健の内容の一つとして「精神疾患の予防と回復」が位置づけられた。本研究では,保健体育の教員免許状を取得する大学生を対象として,精神疾患に関する指導の意識について検討することを目的とした。2022年3月に関東圏のA大学体育系学部に所属する4年生5名を対象として,半構造化面接法による調査を実施した。本研究では教員養成課程における教育への示唆を得る視点から,得られたデータを成人学習理論の枠組みから分析,考察した。ペダゴジーと比較して,成人の学習に対する教授法とされるアンドラゴジーでは,自己主導的なニーズを持つ,自身の経験が学習の資源となる,学習のレディネスとして直面する問題がある,問題中心型の学習を志向する,等の成人の学び方の特徴を前提とすることが重要とされる(Knowles MS,1978)。データ分析の結果,「精神疾患に関する知識の習得不足」,「精神疾患に対するマイナスイメージ」,「教師としての生徒に対する指導の工夫」の3つのテーマが見いだされた。精神疾患に関する指導の充実に向けてはまず,養成段階において,精神疾患は身近で誰もがかかりうる疾患であることを踏まえ,自分事として捉えて知識の習得を動機づけること,精神疾患についての正しい知識や経験のもとで誤った思い込みを払しょくすること,精神疾患の授業における具体的な教材や指導方法等の提示により実際の指導のイメージと自信をもたせることが今後一層必要であると考えられた。