国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

若者と雇用(日本語)

2023年11月11日(土) 09:30 〜 11:00 紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)

座長:吉田 和浩(広島大学) コメンテーター:狩野 剛(金沢工業大学)、谷口 京子(広島大学)

09:30 〜 10:00

[1D01] ウガンダにおける社会的遺児の強いられた自立と職業訓練

*朴 聖恩1 (1. 京都大学大学院)

キーワード:職業訓練、社会的遺児、ウガンダ

本研究は、親の生存に関わらず、十分なケアを受けられずに社会的に遺児となった子どもの生活実態を明らかにし、彼ら・彼女らが受けた職業訓練がその後の生活にどのような意味を持ち得るのかを明らかにすることを目的とする。
 ウガンダではエイズの流行により伝統的な家族構造が十分に機能せず、ケアを受けられない社会的遺児の数が激増した。その結果、政府は児童養護施設を増やして、公的に遺児をケアしようとしてきた。しかし、近年、家庭こそが児童の成長の場であるべきだとの考え方から、施設型ケアから家族型ケアへの転換を表明した。しかし、ウガンダでは社会的遺児の数は増え続けており、政府による支援が不十分なだけではなく、拡大家族の弱化などによって、家族型ケアがエイズ禍の前ほどは機能し得ない状況が浮き彫りになりつつある。そのために、施設型、家族型ケアの両者の不十分さのはざまにいる社会的遺児をどのようにケアするかが問題となりつつある。そして、ケアに加えて、学校教育からも疎外された遺児たちの自立支援が課題となっている。
 発表者は上記のような現状を踏まえて、ウガンダの首都カンパラに所在する社会的遺児を支援する非政府組織の施設を拠点とし、フィールド調査を行った。調査ではこの施設に通った経験を持つ遺児の生活について参与観察を行い、また、遺児の幼少期から現在までのライフストーリーの聞き取り調査を実施した。
 特に、遺児たちの自立の支援として職業訓練が適切かどうかを考えるために、まず通所前の生活実態を捉えようとした。その結果、遺児たちは多様な背景を持ちつつも、共通して上記の二つのケアを十分受けられておらず、自立を余儀なくされる状況に直面していたことがわかった。そして、遺児たちは、自立の手段としてスキルを習得する機会を利用し、そのスキルを活かして就業していることがわかった 。この点で、職業訓練は最低限の役割を果たしていると考えられる。

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