国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

水と衛生(日本語)

2023年11月11日(土) 09:30 〜 11:30 紀-108 (紀尾井坂ビル108)

座長:杉田 映理(大阪大学) コメンテーター:西野 桂子(関西学院大学)、緒方 隆二(国際協力機構)

10:00 〜 10:30

[1H02] 住民は手押しポンプをどのように用いるのかーモザンビーク北部農村における水源の多様性と季節性に着目してー

*近藤 加奈子1 (1. 京都大学大学院)

キーワード:手押しポンプ、給水施設、モザンビーク、水資源、村落給水

安全に管理された水の普遍的な供給が課題となっているサハラ以南アフリカでは、これまでに数多くの手押しポンプが導入されてきた。しかし、手押しポンプの普及や維持管理には課題があり、その利用要件や維持管理の方法などが長年議論されてきた。一方、地域の中で手押しポンプがどのように位置付けられているのかという住民視点の語りは限られている。半乾燥地域において、住民は季節に合わせて畑へ移住するとともに、川や手掘り井戸など多様な水源が存在する中で、彼らの水利用は絶えず変化している。そのため、一つの水源だけ、一時期だけに注目するだけでは、各水源のさまざまな役割と、その全体像は見えてこない。本研究では、手押しポンプとその他水源との関係性および季節性に着目し、住民を取り巻く水環境において手押しポンプが、異なる時季においてどのような働きを持つのか明らかにする。  
 本研究は2019年9月〜12月、2022年8月〜9月までの現地調査の結果をもとに発表する。現地調査では、住民への水利用に関する聞き取り調査ならび参与観察、世帯毎の採水調査を実施した。  
 これまでの調査から、季節によって手押しポンプの重要性は変化することが明らかになった。多くの住民が畑に移動する雨季には、手押しポンプの利用者が減るとともに、住民は雨水を好んで利用している。また、雨季明けは水源に水が多く湛えられており、汲み上げ労力を要する手押しポンプよりも手掘り井戸などが積極的に利用されている。一方、乾季が進み、手掘り井戸などの水源の水が減ってくるにつれ、手押しポンプへの需要は高まる。水が枯れるだけでなく、乾季と雨季の変わり目には降雨によって水が汚れることで手掘り井戸などの水源は利用できなくなる。構造上、汚れが混入しにくい手押しポンプは、飲み水以外にも水浴びや洗濯など幅広い用途に利用されるようになる。利用者と利用量が急増するその一時期、手押しポンプの重要性は最も高まるのである。

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