国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

事業評価・分析(日本語)

2023年11月12日(日) 15:00 〜 16:00 紀-407 (紀尾井坂ビル407)

座長:大橋 正明(聖心女子大学) コメンテーター:石田 洋子(広島大学)、桑島 京子(青山学院大学)

15:00 〜 15:30

[2M09] 女性自助組織を通した母親の資源獲得と子どもの教育への影響
―インドRajasthan州のRajeevikaプログラムを事例に―

*水島 侑香1 (1. 東京大学)

キーワード:インド、女性自助組織、教育意識、教育投資

インド政府は、貧困層の金融包摂と女性のエンパワーメントを目的として、女性自助組織(Self-Help Groups, SHGs)の全国的な展開を後押ししてきた。SHGsは、主に貧困層の女性が共同の貯蓄や集会などを行う小規模のグループである。
 SHGsの社会経済的効果について先行研究では、保健衛生状況の向上や市民性の向上など様々な効果が注目されてきたが、参加メンバーの子どもの教育に与える影響については、十分検討されてきていない。しかし、SHGsメンバーの多くは母親であり、母親が子どもの教育に大きな影響力を持つことを踏まえると、子どもの教育への影響も無視できない。
  また、SHGsメンバーの視点を探ることで、SHGsの経済面にとどまらない教育的効果を検討できるようになる。これまで経済学分野においては、貧困層の金融包摂そのものが子どもの教育に与える負の影響も指摘されてきた。しかし、SHGsは金融包摂による経済的効果を超えて、教育に関する情報や意識などの非金銭的な資源を与えている可能性がある。
 以上を踏まえ本研究では、母親たちがSHGsを通してどのような資源を獲得したのか、またそれらの資源が子どもの教育にどのような影響を与えたかを探るべく、インドRajasthan州のSHGsプログラム(Rajeevika)に参加する母親に対しインタビューを行った。Rajeevikaでは州政府によるトレーニングやレクチャーが豊富であり、教育年数を条件に月給の支払われる様々なポストに就くこともできる。
 調査の結果、母親たちはSHGsを通じて、貯蓄やローンによる経済的資源、他のメンバーとの交流による水平的な社会関係の拡大、NGOや州政府の職員との交流による垂直的な社会関係の拡大といった資源を獲得していたことが分かった。さらに、ポストに就くことで、母親たちはさらなる経済的資源と、社会的地位を獲得していた。これらの資源のうち、経済的資源は教育投資に、社会的地位や垂直的な社会関係は教育意識の変化に繋がっており、SHGsは子どもの教育にプラスの影響をもたらすことが示唆された。

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