国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

ハイフレックス:国力・開発計画・ガバナンス・教育

2024年11月10日(日) 09:30 〜 11:30 F302 (富士見坂校舎 302)

座長: 江田 英里香(神戸学院大学)

コメンテーター: 江田 英里香(神戸学院大学), 森 彰夫(大和大学), 田中 志歩(広島大学)

10:00 〜 10:30

[2B202] バングラデシュのガバナンス改善へ向けて―都市ガバナンス支援の経験からー

*安西 尚子1、*房前 理恵1、*渡辺 広毅2 (1. アイ・シー・ネット株式会社、2. 国際協力機構(JICA)専門家)

キーワード:バングラデシュ、ガバナンス、地方行政、都市ガバナンス、公務員制度、公共政策

2024年8月8日にユヌス暫定政権が発足したバングラデシュは、2000年代より堅調な経済成長を続けているが、ガバナンスに依然課題を抱えている。過去20年の世界銀行ガバナンス指標の経年比較、他国との比較からも明らかである。今回の政権交代のきっかけとなった学生運動の根底には、経済成長の影に隠れた長年のガバナンス不全に対する国民全体の不満があったと言える。2026年に予定されるLDC卒業、その後の上位中所得国入り達成には、効率性、説明責任、包摂性を備えたガバナンス実現のための公共政策の立案と実施が必須である。
 JICAでは、同国ガバナンス改善の一環として、地方行政分野を中心に支援を行ってきた。同国の中央集権度は極めて高い上、公務員制度にも課題は多く、政治介入の影響も受けて法令や政策に不備があり、自治体のサービス提供能力は大きく阻害されてきた。急速に進む都市化への対応のため、特に都市自治体の役割は大きいが、政府内手続きの複雑さも相俟って都市機能は制約されている。そうした中、行財政の分権化と民主主義の基盤強化の方向を見据えつつ、短中期的に可能な制度・組織改善や人材育成に焦点を当て、成果を挙げてきた。例えば、一元管理されていない関連法令を収集して新規起草や改正の必要性を整理し、日本の手法も参考に条例作成を支援した。説明責任の根幹を成す予算・決算に関し、英国時代の省令に依拠するため混乱があったが、省庁間調整による統一勘定科目体系と様式の作成、各都市による活用、市民への説明を支援してきた。この他、歳入管理、組織改善、市民参加、人材育成等の課題と対応策を戦略文書に取り纏め、政府と都市による実施の道筋を付けた。
 本発表では、同国都市ガバナンスに焦点を当て、課題と取り組みの具体例を紹介し、足元の制度や仕組みを積み上げつつ、公務員の政策立案・実施能力育成を図っていく協力アプローチにつき提言を行う。

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