国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

ハイフレックス:国力・開発計画・ガバナンス・教育

2024年11月10日(日) 09:30 〜 11:30 F302 (富士見坂校舎 302)

座長: 江田 英里香(神戸学院大学)

コメンテーター: 江田 英里香(神戸学院大学), 森 彰夫(大和大学), 田中 志歩(広島大学)

10:30 〜 11:00

[2B203] 開発計画の使われ方
〜日本の「全国総合開発計画」と中国台湾の「核四計画」を事例として検討する〜

*石 暁宇1 (1. 就職中)

キーワード:開発計画

多くの国の政府は、開発計画の推進を通じて自国の開発パフォーマンスを改善しようとしている。成功な事例も多かったが、失敗の事例も非常に多かった。失敗の事例は、開発計画の目標と実態との間に大きなギャップが存在していることを示唆している。しかし、政府やドナー側は、役に立たない開発計画を続いて作ってしまったことは、意味がないことではないかと考える。本発表では、リサーチ・クェスチョンとして「国の開発の過程において何のために開発計画は存在しているのか?」を提示する。先行研究の知見によれば、開発過程における開発計画の意義を4つの側面から検討した。すなわち、開発計画は、「限られた資源の有効な利用」、「政府と社会の意思決定に根拠を与えること」、「外国援助の獲得とドナー側の利益擁護」、「利益調整の場と政治的取引の手段」としての意義が見いだされた。しかし、上述の先行研究の観点には、解釈できないパズルが残される。開発計画は、仮にその計画の対象となる課題の解決に役に立たなくても、開発を推し進めるケースが存在する;逆に、開発計画は、その計画の対象となる課題の解決に役に立たない場合、その悪影響はそれにとどまらず、それ以上に社会の開発を妨げるケースも存在する。これらのパズルを説明するために、本発表では、理論的枠組みとして「拒否権プレイヤー理論」と「フォーカル・ポイント理論」の組み合わせを用いた。仮説として、「開発計画」も、利益アクター間の「フォーカル・ポイント」としての役割を果たし、正式な制度に変わり、もしくは補足する形で利益アクター間の利害調整のパフォーマンスに重要な影響を与えることを挙げた。仮説の実証のために、日本の「全国総合開発計画」と中国台湾の「核四計画」の事例を分析した。結論として、国の開発過程において、開発計画はその本来の役割「以外」の機能(意図せざる効果)を果たすことがある。開発計画が、「フォーカル・ポイント」として拒否権プレイヤー間の利害調整のプロセスに影響を与える形で、予期せぬ開発効果または開発の更なる困難化をもたらす可能性があるということである。

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