第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

血管内治療

2014年10月31日(金) 13:10 〜 13:40 第6会場 (第1練習室)

座長: 柚木靖弘(川崎医科大学 心臓血管外科)

13:10 〜 13:40

[P-19-3] 上腸間膜動脈解離後のULP拡大に対してcovered stentを使用した1例

松村仁, 和田秀一, 峰松紀年, 尼子真生, 神谷信次, 助広雄太, 寺谷祐充, 清水真行, 西見優, 田代忠 (福岡大学 心臓血管外科)

キーワード:isolated dissection, covered stent

大動脈には解離がなく,主要分枝のみに解離を生ずるisolated dissectionは稀な疾患とされていたが,診断法の発達より発見されることも多くなっている。治療には,保存的治療・血管内治療・手術があるが,現時点ではどの治療を行うか明確な基準は未だに確立されていない。当科では,腸管虚血症状や解離腔拡大など認めなければ保存的治療を選択してきた。今回,上腸間膜動脈(SMA)解離後のULP拡大に対してcovered stentを使用した症例を経験したので報告する。症例は52歳男性。H25.12月に突然腹痛と背部痛で発症。CT所見で腹腔動脈(CEA)・SMAの解離を認め当科紹介入院。CEAは大動脈起始部より脾動脈まで解離を認め,偽腔は開存していた。SMAはSakamoto分類のTYPE3であった。入院後より鎮痛剤・降圧剤を開始したが,腹痛が持続した。10日後のCTでULPの軽度拡大と末梢側の狭小化を認めたが,腸管壁の造影不良・腸間膜の浮腫は認めなかった。腸管虚血を完全に否定することが出来ず,ULPも拡大傾向のため血管内治療を施行した。術後3カ月のCTではステントは開存しておりULPも血栓化,SMA末梢の狭窄も改善されていた。多くは保存的治療により改善するが,腸管虚血を疑った場合,血管内治療や試験開腹を含めた手術を選択すべきであると報告されている。血管内治療は低侵襲であり,虚血の速やかな改善が得られるが,治療の欠点として,腸管を直接観察できないことと動脈破裂の危険性があることが報告されている。長期成績は不明だが,本例の様に腹部症状が持続する場合は,治療の1つとして有用な可能性がある。