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[PR-1-2] 長期グラフト開存における重症虚血肢の創治癒状態への影響
キーワード:distal bypass, graft occlusion
【背景】重症虚血肢患者は,広範な動脈硬化や不良な自家静脈のため,長期グラフト開存は困難であることが少なくない。長期グラフト開存が創治癒状態に与える影響を検討した。【対象】2005年から2013年5月に埼玉医大総合医療センター血管外科でバイパス術を施行した重症虚血肢のうち,1年以上フォローできた152例164肢を対象とし,創治癒後の問題をカルテよりretrogradeに検討した。【結果】平均年齢69.4歳,男性は105例112肢であった。併存症は糖尿病80%,末期腎不全37%,脳血管障害32%,虚血性心疾患40%であった。Fontaine IIIが24肢15%,Fontaine IV 140肢85%であった。Distal bypass症例が122肢74%,膝窩動脈より中枢のバイパスが42肢26%であった。術後1年までに創が治癒した症例は141肢86%,治癒せず大切断が14肢9%,未治癒が8肢5%であった。大切断,未治癒症例22肢のうちグラフト閉塞は10肢で他は感染が原因であった。治癒症例のうち潰瘍壊死など再度重症虚血肢(再CLI)になったのは14肢で膠原病合併が半数の7肢であった。8肢はグラフト閉塞で再CLI化していたが,グラフト開存のまま再CLI化したのは4肢で,全例糖尿病で,2肢は透析症例,2肢は心不全の悪化であった。多変量解析で再CLIに相関する因子はグラフト閉塞,膠原病であり,distal bypassの有無,糖尿病,透析,血中アルブミン値は関係しなかった。一方,生存率は透析症例で有意に低かった。【結論】短期的に創治癒には感染コントロールが重要であるが,長期的な創治癒の維持には,非透析(特に膠原病)患者ではバイパス開存であった。透析患者は生命予後が不良であり,長期バイパス開存より感染コントロールがより重要と考えられた。