日本女性骨盤底医学会 第25回学術集会

講演情報

一般演題

保存的治療(全般)

理学療法の探求

2023年8月5日(土) 14:25 〜 14:55 第1会議室 (日本教育会館 8F)

座長:青木 芳隆、重田 美和

14:45 〜 14:55

[1B22V] エンコンパスを用いた全身トレーニングの
骨盤底挙上と尿失禁症状改善報告の1例

○岡橋 優子4、中野ジェームス 修一1、関口 由紀2、中村 綾子2、笹岡 愛加2、対馬 ルリ子3 (1. ㈱スポーツモチベーション 、2. 女性医療クリニックLUNAネクストステージ、3. 医療法人社団ウィメンズ・ウエルネス対馬ルリ子女性ライフクリニック、4. 早稲田大学 スポーツ科学部)

キーワード:骨盤底筋トレーニング、腹圧性尿失禁、エンコンパス重心変動

【目的】骨盤底筋は体幹の筋肉の一部で,身体の動的安定性を保つ役割を担っている.エンコンパスは,滑車の原理と傾斜角度を利用したワイヤー系マシンであり,重心の変動によって体幹機能の向上と動的安定性の強化が可能とされている.しかしながら,骨盤底筋へのエンコンパストレーニングの効果はまだ検証されていない.ここでは,骨盤底筋の機能向上を目的としたエンコンパス全身トレーニングにより,尿失禁症状と骨盤底筋機能に改善が見られた症例を報告する. 【症例】 53歳の女性,身長147cm,体重51.2kg,出産経験無し.頻尿傾向があり,少量の尿失禁症状が咳や急な尿意を感じた時に自覚されている.介入は3か月間,週に1回の60分間のエンコンパス全身トレーニングを実施.前後に超音波診断装置を用いて膀胱底挙上量を測定し,ICIQ-SFによる骨盤底筋機能の評価を行った. ICIQ-SFの合計スコアは,介入前の11点から4点へと改善し,日常的な尿失禁が消失,生活の質が向上した.超音波評価では,介入前は安静時と収縮時の差は-11mmであり,骨盤底筋の下降が認められた.介入後は5mm挙上し,収縮感覚の獲得を得た. 【結語】 従来の研究では,骨盤底筋の随意収縮訓練だけでなく,体幹トレーニングによる骨盤底筋機能の改善効果も報告されている.本症例では,体幹機能を向上させるエンコンパストレーニングが骨盤底筋機能の向上にも効果的であり,尿失禁症状の改善に期待ができることが示唆された.今後はエンコンパストレーニングが骨盤底筋機能向上の有望なアプローチであることを確認するために,大規模かつ長期的な研究が必要とされる.