第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

ポスター

ポスター52群 対象と向き合う看護職の意識②

2024年9月29日(日) 09:00 〜 10:00 ポスター会場 (展示ホール)

座長:宮﨑 貴子

[ポスター52-3] ALS患者に関わる看護師の陰性感情の対処行動

大庭 貴子, 上島 彩葵, 柳澤 美紀, 山崎 智恵, 長谷川 味佳 (長野赤十字病院)

【緒言】先行研究では、筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)患者に対し看護師が抱く感情は苛立ち、悲しみ、諦め、無力感、共感、満足感、申し訳なさであり、経験の浅い看護師へのサポートが必要であると述べている。陰性感情に対する対処行動は先行研究では明らかになっていない。今回ALS患者に関わる看護師の陰性感情の対処行動を明らかにすることで、経験の浅い看護師へのサポートに繋げられると考え本研究に取り組んだ。【目的】ALS患者との関わりで抱いた陰性感情の対処行動を明らかにする。【方法】研究デザインは質的記述的研究である。B病棟での勤務年数が4年以上の看護師を対象とし、陰性感情を抱いたエピソードや対処行動について半構成的面接を行った。得られたデータを比較検討して、サブカテゴリー、カテゴリーとし抽象化した。対象者には研究への参加は自由意志であること、得られたデータは本研究以外で使用しないこと、プライバシーは保護されることを説明し同意を得た。A病院の看護部倫理審査会で承認を得た(承認番号第2022-04号)。【結果】研究対象者は6名。分析の結果110のコード、30のサブカテゴリー、9のカテゴリーが抽出された。看護師は、『本人のこだわりに対応しなければならないイライラ感』『コミュニケーションをスムーズにとれないことでのもどかしさ』『病気や症状が改善しないことによる無力感』『急変時・延命処置(意思決定)後に感じるもどかしさ』『ケアを行うことで生じる嫌悪感』『自分のペースで仕事ができないことへの諦め』といった陰性感情を抱いており、対処行動は、『個人でできる工夫』『患者に協力を求める工夫』『他のスタッフと協力して関わる工夫』であった。【考察】看護師は経験年数のある看護師でも陰性感情を抱きながら仕事をしていることが明らかになった。対処行動として『個人でできる工夫』では<関わり方を体にしみこませる><なるべくコミュニケ―ションをとることでパターン化する><情報収集をして関わる>等前向きに患者と関わる様子が伺えた。『患者に協力を求める』では、限られた時間・人数の中でケアを行っているため患者と話し、お互いを歩み寄って合意できるところを見つけていた。先行研究では陰性感情に対する対処行動として他者からサポートを受けることが明らかになっているが、本研究でも『他のスタッフと協力して関わる工夫』の中で<思いを吐き出す>など、スタッフ同士で語り合い「自分だけではない」と実感していた。【結論】経験年数を重ねても陰性感情を抱いていた。対処行動は個人でできる工夫、患者に協力を求める工夫、他のスタッフと協力して関わる工夫であった。本研究の対象者は6名であり一般化には限界がある。経験の浅い看護師に個人でできる工夫や患者・他のスタッフに協力を求めてよいことを伝えていくことでサポートの一助になると考える。