第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

ポスター

ポスター11群 在宅療養移行支援③

2022年11月8日(火) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場)

座長:和田 みどり

[ポスターM-11-4] 1 週間の入院期間における疼痛のある終末期がん患者の在宅移行支援

-訪問看護出向経験のある病棟看護師の実践-

穂本 佳夏, 清水 奈穂美, 多川 晴美 (滋賀医科大学医学部附属病院)

キーワード:訪問看護出向、在宅移行支援、短期間、がん性疼痛、在宅看取り

【抄録】
【目的】がん治療の進歩に伴い選択肢が広がり、終末期がん患者の在宅支援のが難しい場合がある。A大学病院は、在宅療養支援能力の向上として2019 年より病棟看護師が一定期間訪問看護ステーションへ就業する在籍型出向システムを構築した。本研究は、出向を経験した病棟看護師が疼痛のある終末期がん患者の事例を通して1 週間の入院期間中に実践した支援内容を明らかにし、超急性期病院における在宅移行支援について検討した。【方法】事例研究。期間2021 年4 月~ 2022 年2 月。データは、終末期がん患者と家族に対する支援内容を経時的に書き起こした。分析は、出向を経験した病棟看護師が出向コーディネーターと共に支援内容を振り返り、その判断や行動を抽出し、在宅移行支援を検討した。在宅移行支援とは「退院支援・退院調整を通して在宅看取りと可能にするための支援」と定義した。倫理的配慮として、情報の取り扱いは個人が特定されないように配慮した。【結果】事例概要: 後期高齢者、男性。消化器がん末期。病勢進行とがん性疼痛が増強し入院となった。入院時、外来通院時の情報から本人は在宅看取りを希望しており「入院は1 週間」と決めていることを確認した。本人の意向を再確認し、病状から予後を予測し、在宅医と訪問看護の導入を退院調整看護師に依頼した。家族は「麻薬を使用して本人が苦しまないようにしてほしい」や「家族でゆったりと看取りたい」と希望した。家族の思いを受け止め、医療用麻薬は鎮痛効果や副作用のモニタリング、段階に応じた薬剤調整を要することを説明し、家族の理解を促した。入院3 日目、本人の苦痛を評価し、レスキューの服用頻度をみながら主治医と相談し薬剤を増量した。家族には疼痛の増強やせん妄など終末期に起こりうる症状の変化を伝え、看取りに対する心の準備ができるように支えた。入院5 日目、本人の意向に沿えるように現時点の薬剤のまま退院する方向で話し合い、医療用麻薬の対応を在宅医に依頼し、訪問看護師と情報共有し、体制を整えた。結果、1 週間での退院となり、家族に見守られ最期を自宅で迎えられた。【考察】短期間の入院でも、外来時の情報から本人の意向を把握し、病棟でもその思いを繋げたことにより本人の望みを実現することができたと考える。超急性期の剤楽移行支援には、家族の思いを支え、がん性疼痛の評価と在宅看取りの体制の迅速な対応が重要であったと考える。