第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

ポスター

ポスター14群 意思決定支援

2022年11月8日(火) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場)

座長:山田 仁映

[ポスターM-14-4] 造血幹細胞移植後の一次生着不全に対し再移植を行った患者の意思決定過程

-診療記録の分析を通した観察研究-

宮内 貴未1, 吉田 紘美1, 水戸部 恵実1, 坂井 さゆり2 (1.新潟大学医歯学総合病院, 2.新潟大学大学院保健学研究科)

キーワード:造血幹細胞移植、拒絶、一次生着不全、再移植、意思決定

【抄録】
【目的】造血幹細胞移植後の一次生着不全に対し再移植を行った患者の意思決定過程において、患者の意思決定に至る背景を診療記録から臨床倫理的に分析し、協働的意思決定過程の普遍的法則性を推論する。【方法】1. 対象:P 病院血液内科で生着不全となり、再移植を行った患者4 名(A、B、C、D)の診療記録 2. 研究デザイン:質的記述的研究 3. 研究方法:診療記録を時系列表にまとめ、ジョンセンらの4 分割表を作成した。宮坂のナラティヴ・検討シートの4 つの概念枠組みを用いてデータをカテゴリー化し、当事者間の関係性や思いをパターン化して分析した。4. 倫理的配慮:Q 大学における人を対象とする研究等倫理委員会の承認を得て、データは個人が特定できないようにした。【結果】協働的意思決定過程の患者の普遍的法則性には、〖再移植を受け入れられない〗〖再移植を受け入れている〗があった。看護師は患者の気持ちを理解できているか否かに思考が左右され、葛藤や無力さを抱きやすかった。医師は患者の身体や病状に意識を向けており、家族は根治することを願う強い思いが伺えた。【考察】A は、全人的苦痛により医療従事者の説明や支援を受け入れる事ができず、意思決定ができる過程まで進めなかったと推測できる。看護師は、再移植の必要性は理解しつつも、患者の意思を尊重できないまま治療を進めざるを得ない状況に葛藤があると推察できる。B は、血球数や症状から、生着不全の判断が困難な事例だった。患者は、自身の症状に生着症候群を当てはめ、血球数が減少している状態でも生着することを期待していた。看護師は、血球数が安定しない中で病態や再移植の可能性を患者に説明できない事や、患者の理解を得ないまま再移植の準備を進める事に葛藤があったと推察できる。C とD は、将来を見据えることの多い思春期・若年成人(AYA)世代だった。治療後の目標を言語化し、イメージしていた事が、生着不全の診断後すぐに再移植を受け入れた要因の一つと推察できる。しかし、看護師は、生着不全となった事で患者に大きな精神的負担がある事を前提に関わろうとしていた。その為、患者の本心を知りたいという意識にとらわれ、患者の意思決定過程に応じた支援が不足していたと感じていると推察できる。