第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

ポスター

ポスター15群 せん妄の看護

2022年11月8日(火) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場)

座長:原田 路可

[ポスターM-15-5] 高齢者における鎮静下内視鏡治療後のせん妄発症状況とその要因

太田 美優 (岩手県立中央病院)

キーワード:せん妄、鎮静下内視鏡、高齢者

【抄録】
【目的】鎮静下内視鏡治療後のせん妄発症状況と要因について調査する。【方法】1. 研究デザイン:関係探索研究。2. 研究期間:令和3 年4 月~ 6 月。3. 対象者:A 病棟へ入院した75 歳以上の高齢者。4. 方法:電子カルテ記載から、年齢、性別、既存疾患、緊急入院・脳血管疾患や精神疾患の既往歴・認知症・せん妄発症ハイリスク薬内服・アルコール常飲・喫煙の有無、治療時間、鎮静薬使用量、バイタルサイン、採血データ、内視鏡診療方法について情報収集し、せん妄の発症状況とその経過、せん妄の発症因子の検討を行った。本研究では、せん妄スクリーニングツールを使用し、治療後1 病日午前10時にせん妄評価を行い、せん妄の有無でχ2 検定をし要因分析を行った。【結果】調査対象患者は男性11 名(44%)、女性14 名(56%)、平均年齢81.8 ± 5.2 歳、発症率16%であった。せん妄を発症した群の平均年齢は81.8 ± 3.4 歳、せん妄を発症しなかった群は81.1 ± 5.2 歳であった。せん妄を発症したのはERCP 群のみであり、平均年齢はERCP が最も高く84.1 ± 4.6 歳、大腸ESD は79.8 ± 3.8 歳、胃ESD は76.2± 0.5 歳であった。せん妄発症において、認知症の有無(p値= 0.0007)、Hb 値(p 値= 0.0007)、Cl 値(p 値= 0.0270)の3 項目で有意差を認めた。せん妄を発症しなかった群に比べせん妄を発症した群は緊急入院であり、採血データすべてにおいて基準値外が多い傾向を認めた。【考察】ERCP の平均年齢は高い傾向にあったことや、内視鏡治療や疾患に伴い絶飲食管理となる患者も多く、口渇・空腹感によるストレスや全身状態の悪化による血清電解質異常がせん妄発症の要因となっていると考えられる。年齢や生活環境の変化、認知機能障害、電解質異常を含めた代謝異常等はせん妄要因として多く報告されており、本研究においても傾向に違いはなかったが内視鏡診療方法別や入院方法でのせん妄発症率の違いが明らかになった。緊急入院の割合が多く入院に対する心構えが十分に行えないままに、鎮静下で内視鏡治療検査が行われ、覚醒時には慣れない病棟へ入院しているという状況がせん妄発症の要因の一つであったと考えられる。よって、A 病棟における鎮静下内視鏡治療後のせん妄発症要因は年齢、緊急入院、全身状態の悪化による血清電解質異常であることが示唆された。