第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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ポスター

ポスター28群 患者の回復と生活の質の改善に向けた看護②

Wed. Nov 9, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場 (国際展示場)

座長:栂野 加寿枝

[ポスターM-28-5] 顎変形症手術後の疼痛管理に関する検討

-疼痛評価スケールを用いて-

金本 智美, 播磨 美奈, 加根 千賀子, 木村 久美 (徳島大学病院)

Keywords:顎変形症、疼痛評価、術後疼痛

【抄録】
【目的】顎変形症の術後経過から疼痛の変化を調査し効果的な疼痛管理方法を検討する。【方法】2021 年9 月~ 12 月にA 病院で顎変形症の外科的治療を受けた患者4 人を対象とした。術後の疼痛評価として、患者はNumerical Rating Scale(NRS)で評価し、看護師はCritical-care Pain Observation Tool(CPOT)で評価している。数値が高いほど疼痛が強い。研究デザインは後方視的研究とし、電子カルテより通常診療で得た情報と看護記録から術後の疼痛スケール値の変化、鎮痛剤投与状況等を調査した。倫理的配慮は、個人が特定されないように匿名化し情報公開文書を病棟と外来に掲示し、いつでも参加を拒否できることを通知した。【結果】対象者4人の平均年齢は28.8 歳、平均入院日数は14.3 日で術後感染症等の合併症はなかった。ドレーン類が除去される術後3 日目までは浮腫が著明で苦痛も大きく、全症例でNRS5 ~ 10、CPOT0 ~ 2、平均血圧20mmHg の上昇がみられた。アセトアミノフェンとNSAIDs の併用投与でNRS0 ~ 4 に低下し血圧も安定した。症状のピークを越える術後3 日目以降においても、1 症例は創部処置後と夜間にNRS4 ~ 8 と高値を示したが、鎮痛剤投与後には0 ~ 3 に低下した。また、術後12日目までは概ねNRS ≧ 3 で推移しNSAIDs の使用頻度が多かった症例もあり、退院前まで疼痛は持続し看護師が認識する以上に患者は疼痛を我慢していることがわかった。【考察】本研究ではNRS とCPOT を使用し、疼痛に着目し後方視的に術後の疼痛の変化や鎮痛剤投与の状況などを振り返った。顎変形症手術後は言語的コミュニケーションが取りにくく、創部の腫脹などで苦痛表情も読み取りにくい。看護師は患者の苦痛を理解しているが、苦痛の度合いの認識については患者との間にずれがあるとの報告がある。本事例でも、患者は疼痛を我慢している実態があることから、術前より痛みの表現方法を患者と共有しておくことや術後経過のイメージ化を図り、積極的鎮痛に対する理解を得ておくなどの患者教育を行うことが必要であると考える。本研究は対象症例数が少なく限界があるが、患者の苦痛を正しく認識して有効な疼痛緩和を図るためには、主観的評価と客観的評価を統合させて総合的に判断することの重要性が示唆された。