第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演16群 新型コロナウイルス感染症下の看護~面会制限下の患者・家族への対応~

2022年11月8日(火) 11:30 〜 12:30 口演会場6 (104)

座長:北野 貞

[口演M-16-2] 「コロナ禍での面会制限」と「急速な病状進行」が同時に存在した終末期がん患者と家族への看護ケアの検討

木元 喜子1, 井田 奈緒子1, 蓮間 倫代1, 松浦 恵美1, 大崎 理沙1, 小間 愛子3, 市川 愛絵1, 堀口 智美2 (1.金沢大学附属病院, 2.金沢大学医薬保健研究域保健学系, 3.前金沢大学附属病院)

キーワード:コロナ禍、髄膜癌腫症、面会制限、終末期、家族看護

【抄録】
【目的】コロナ禍での面会制限と急速な病状進行が同時に存在した終末期がん患者とその家族に対する看護ケアを振り返り、実施したケア・できなかったケアとその背景を明らかにする。さらに、よりよい看護ケアについて検討する。【方法】A 病院で面会制限が開始された2020 年2 月以降に入院した、髄膜癌腫症により急速に病状が進み死亡した肺がん患者1 名を対象に、事例研究を行った。診療記録より患者の情報、医師・看護師による患者・家族への関わりとそれに対する反応をデータ収集した。分析は「日本の現場発看護学」の構築を目指した事例研究方法を参考に、データを元に共同研究者間で対話しながら看護ケア(実施したケア・できなかったケア)をカテゴリー化し、どのような看護ケアを行うことが望ましいかを検討した。研究への同意は代諾者である夫に対し電話で説明の上、後日文書を郵送し同意書の署名にて得た。【結果】1.対象者の背景:患者は肺がん(stage4・脳転移)に罹患した50 代女性で、夫と義父の3 人暮らしで、息子は県外在住であった。3 次治療の化学療法を予定していたが、髄膜癌腫症の症状が出現し緊急入院した。全脳照射の方針となったが意識障害とてんかん発作がみられ、入院11 日目にベストサポーティブケアの方針となり、入院16 日目に死亡に至った。2.分析結果:看護ケアから3 個のカテゴリー<今後の回復に期待を寄せ、治療に向けての歩みを支えることに注力する><刻々と病状悪化する中で、人生の最終段階の過ごし方に関する意思確認を躊躇する><コロナ禍での本人と夫のよりよい面会方法を模索する>が抽出された。急速に病状進行する中、患者の身体的苦痛の緩和を最優先に行ったが、治療への希望を失わせたくない思いがあり、さらに意識障害の出現も重なった結果、患者への意思確認については躊躇し十分に行えなかった。また医師と協議し夫の15 分間の面会を実現できたが、限られた機会の中で家族の思いを十分に確認できず対応に戸惑う状況があった。【考察】患者と家族が充実した時間を過ごすためには、治療が奏功しない可能性も視野に入れつつ、患者の思いを知るためにコミュニケーションを工夫しながら関わること、家族来院時に家族と関わる機会を意図的に作り、患者との短い面会時間をどのように過ごしたいかを含めた家族の思いを把握し対応することなどの看護ケアの必要性が示唆された。