第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演17群 新型コロナウイルス感染症下の看護~感染対策~

2022年11月8日(火) 14:00 〜 15:00 口演会場6 (104)

座長:髙橋 初枝

[口演M-17-2] 新型コロナウイルス感染症による感染対策の認識

-濃厚接触者となった看護師の体験-

小林 洋美, 春野 裕子 (深谷赤十字病院)

キーワード:新型コロナウイルス感染症、感染対策、濃厚接触者、不安、認識

【抄録】
【目的】入院前の新型コロナウイルスPCR 検査が陰性で、入院後陽性が判明した事例を2021 年2 月に経験した。その結果、ICU 看護師28 名中18 名が濃厚接触者となり、濃厚接触者の出勤停止、医療の縮小、特定の医療者への業務負担、精神的動揺や不安、これまでの感染対策に対する疑いなどがおきた。今回濃厚接触者となった看護師の行動や思いを多角的に振り返り、感染対策に対する認識を明らかにする。【方法】2021年9 月2 日~ 25 日、濃厚接触者となった看護師12 名を対象とし、インタビューガイドを用いて1 人約30 分の半構成的面接法を実施した。データ分析は質的帰納的に行った。逐語録をもとにコード化し、各コードを内容の類似に基づきサブカテゴリとカテゴリに分類した。なお、A 病院の看護研究倫理審査会の承認を受け、研究対象者へ文章で説明し、同意を得たうえで実施した。【結果】分析の結果、16 サブカテゴリと、《新型コロナウイルス感染症の知識や経験不足》、《待機中の様々な感情》、《不十分な感染対策がもたらした意識の変化》、《感染対策への課題》の4 カテゴリが抽出された。【考察】新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の知識や経験不足は、PCR 陰性を信頼しコロナではないという認識により不十分な感染対策を招き濃厚接触者を多数出すことになってしまったと考える。濃厚接触者が体験した様々な感情は、感染不安や罪責感情であり、更に罪責感情によりトラウマを抱いていたと考えられる。濃厚接触者に対して、他のスタッフと情報共有できる機会を設けるなど組織的な心のケアが必要であった考える。また、このような様々な感情により、濃厚接触者は感染対策をより徹底し、疑問や不安なことがあれば他のスタッフや上司、医師へ働きかけをすることが大切であるという意識の変化をもたらしたと考える。非濃厚接触者に感じたコロナへの意識の差や感染対策のばらつきは、濃厚接触者がこの体験を通して、感染症に対するリスクイメージが高くなったために生じたものと考えられた。濃厚接触者の体験をICU や施設全体で共有し、正確な情報提供、教育により知識を高めることが、コロナへの意識の差や感染対策のばらつきをなくすことに繋がるのではないか考える。