第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演22群 重症化予防

2022年11月9日(水) 09:30 〜 10:30 口演会場1 (302)

座長:大柴 幸子

[口演M-22-1] 運動療法による血液透析患者が有する自覚症状改善への効果

鈴木 朋子 (関西医科大学総合医療センター)

キーワード:血液透析、自覚症状調査、運動療法

【抄録】
【目的】血液透析患者は、倦怠感・食欲不振・皮膚のかゆみ等の自覚症状や、水分や食事制限、継続治療の必要性・合併症など様々な要因から抑うつな精神症状が見られる。また、透析患者はサルコペニアやフレイルになりやすい。透析中の運動療法は運動に対する意欲の向上や活動量の増加、透析効率に良い影響を与えているとの報告があり、外来血液透析患者に対し、202X 年4月より運動療法を開始した。血液透析患者特有の自覚症状調査票:愛Pod(使用許諾済み)を用い、どのような自覚症状が改善するのかを明らかにする。【方法】量的研究デザイン。データ収集期間は202X 年4 月から14 か月間。対象者は、血液透析中に運動療法を1 年継続し、研究目的、自由意思、参加の有無による不利益を被らないこと等を書面で説明し同意を得た患者16 名。研究方法は、自覚症状調査票より運動療法開始前と1 年後の自覚症状を点数化し、Wilcoxon 符号付き順位検定を使用して比較した。体組成測定・筋力測定・身体機能測定結果、トレーニング記録表の分析を行った。【結果】自覚症状の合計点数では、16 名中10 名が点数減少を認めた。項目ごとでは関節痛・かゆみ・イライラ感・だるさ・動悸や息切れ・便秘・寝つき・穿刺痛・頭痛・足のつり・起き上がり・食欲・食事のおいしさ・のどの渇き・無気力感については有意差を認めなかったが、熟眠感・苦痛を伴う血圧低下・食事制限のつらさ・憂鬱な気分については有意差を認めた。体組成測定・筋力測定・身体機能測定では、サルコペニアの人数が8名から4名に減少した。【考察】透析中に運動療法をすることで1. 覚醒時間が多くなったことや、運動習慣がなかった患者が疲労を感じ、熟眠感を得られるようになった。2. 血液の循環がよくなり、急激な血圧低下を予防し苦痛を伴わなくなった。3. 交感神経が優位となり、胃腸機能が低下することで食への執着がなくなり、食事制限のつらさの軽減につながった。4. 分泌されるセロトニンやエンドルフィンが患者の憂鬱な気分に影響を与えたのではないかと考える。運動療法は、自覚症状改善以外にも透析時間の有効活用や運動への意識付けとなった。その効果を持続するためには継続が必要である。自覚症状の改善・サルコペニア治療を目指し、運動効果をフィードバックして患者のモチベーションを上げ、患者自身が運動療法に主体的に取り組めるようにしていく。