第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演30群 在宅療養移行支援③

2022年11月9日(水) 12:40 〜 13:40 口演会場3 (304)

座長:横山 孝子

[口演M-30-3] 訪問看護在籍出向を経験した看護師によるICU退院支援の導入プロセス

吉田 彬人, 清水 奈穂美, 多川 晴美 (滋賀医科大学医学部附属病院)

キーワード:訪問看護、在籍型出向、退院支援、ICU、超急性期

【抄録】
【目的】A 大学病院では、在宅療養支援能力の向上として2019 年より病院看護師が一定期間訪問看護ステーションへ就業する在籍型出向システムを構築した。出向後には、出向した看護師が所属部署において出向経験を活かし、退院支援リンクナースとして活動している。本研究は、集中治療室(以下、ICU)から在籍出向した看護師が、病棟看護師だけでなくICU 看護師にも退院支援の意識が必要と考え、ICU入室早期から退院後の生活を見据えた支援体制を導入したプロセスとその成果について報告する。【方法】期間2020 年4 月~ 2021 年3 月。ICU における退院支援導入のプロセスを、第1 段階「出向経験の伝達講習」、第2 段階「退院支援が必要な患者の把握」、第3 段階「入退院支援カンファレンスの導入」の3つのフェーズに整理し、実践内容を記述した。分析は、在籍出向事業コーディネーターらと共に出向者が実践を振り返り、導入後の支援体制の変化について検討した。倫理的配慮として、所属機関の許可を得てリンクナースとして活動を実施し、情報の取り扱いは個人が特定されないように配慮した。【結果】導入プロセスとして第1 段階は、早期より急性期から回復期や療養期までの切れ目のない移行支援の重要性をスタッフに周知した。第2 段階では、ICU 入室時は重症度が高く、患者の回復過程の予測がつきにくいが、入院前の生活状況や社会資源利用の有無等を中心とした情報が必要であり、早期介入に繋がることをスタッフに説明し情報収集の方法を統一した。さらに、電子カルテの掲示板に得られた情報を記載し、スタッフ間の情報共有を図った。第3 段階では、所属長、スタッフ、退院調整看護師やMSW と協働し、各ベッドサイドで行うウォーキングカンファレンスを取り入れた。対象は緊急入院した新規ケースとし、週1 回1 ケース5~ 10 分程度で実施した。この活動により、スタッフが患者の入院前の生活状況や家族からの情報を早期に得るようになった。ICU でのカンファレンスの導入により院内の体制が整い、入退院支援加算1の取得が実現した。【考察】ICU から始める退院支援の導入により、退院支援に必要な情報が目に見え、スタッフらが意識的に情報収集を行うようになった。この取り組みは、超急性期の段階から入院前の生活を考慮した退院支援の必要性を考える契機となったと考えられる。