第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演39群 新型コロナウイルス感染症下の看護~看護職の心理①~

2022年11月9日(水) 14:00 〜 15:00 口演会場5 (103)

座長:尾田 由香

[口演M-39-3] 新型コロナウイルス感染症病棟における看護師のジレンマとカンファレンスでの共有による看護実践の変化

渡辺 香緒里, 永井 孝行, 霜鳥 暁子 (新潟県済生会三条病院)

キーワード:新型コロナウイルス、カンファレンス、ジレンマ、感染対策、寄り添う看護

【抄録】
【目的】2021 年A 病院でもコロナウィルス感染者の受け入れが開始された。しかし、感染対策によるケア時間の短縮に伴い、不安を抱える患者の話を傾聴できない等の意見が看護師から挙がった。そこで、患者対応への看護師のジレンマを共有したことにより、看護実践の変化が見られたので報告する。倫理的配慮:被験者には研究の主旨を説明し同意を得た。また、院内倫理委員会から研究実施の承諾を得た【方法】1. コロナ病棟看護師17 名を対象とし必ず一度は参加を条件2. 患者対応へのジレンマについてカンファレンスを計4 回開催3. カンファレンスで挙がった意見を看護師間で共有4. 看護師の行動変容を看護記録から抽出5. 看護記録から抽出した看護実践の記述内容を質的帰納的に看護記録を分析し、カンファレンス前後の変化を比較分析した【結果】カンファレンスでは「コロナ病棟でも患者の尊厳や倫理に関わる問題は存在している」等の意見が挙がった。患者の視点に思いを向けることの大切さを共通認識した。カンファレンス前は、症状の確認に関する会話が中心だったが、その後の実践では、患者の思いを意識して傾聴し、患者の立場に立って考え対応している等の状況が看護記録から抽出された。【考察】コロナ病棟の看護師は、カンファレンスの開催により、患者に対する看護師個々の思いを共有したことで、患者の視点や思いに目を向けることの大切さを認識できたものと考える。岡崎ら1)は、「個々の看護師が抱えるジレンマをオープンにすることで、病棟あるいはグループ全体のジレンマがオープンになり、そのグループの看護は看護師も患者も満足感の得られるケアへと動いていく」と述べている。また、行動制限がある入院生活の中で患者が発する言葉は、優先的に看護師に伝えたいという最も意味ある言葉であると捉えることができる。岡は「対象の思いに耳を傾け、その思いを受け止め、共感するという行動は、対象との円滑なコミュニケーションに繋がり、さらに信頼関係の構築にもつながる」2)と述べている。これらの経験から、一般病床でもコロナ病棟でも患者の思いに寄り添って対応していくことが重要であり、それを看護師が共通認識できたことで、患者が発した言葉を意識して受け止め、それに寄り添った対応に行動変容したと思われる。