第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演6群 自立を目指した日常生活の援助

2022年11月8日(火) 15:30 〜 16:30 口演会場2 (303)

座長:長坂 奎英

[口演M-6-4] 水分摂取がすすまないアルツハイマー型認知症患者の飲水量アップを目指して

富岡 留美子, 小瀧 陽子, 五十嵐 美佳, 佐藤 小由李 (竹田綜合病院こころの医療センター)

キーワード:アルツハイマー型認知症、飲水拒否、嗜好、水分摂取量促進

【抄録】
【目的】飲水を勧めても拒否するアルツハイマー型認知症の患者に対し、嗜好(種類・味)、時間や環境、勧め方を工夫することにより、水分摂取量アップできるのかを明らかにする。【方法】研究対象は90 歳代女性A 氏。ADL 全介助。嚥下機能問題なし。長谷川式13 点。研究期間は約60 日間。データ収集方法は、入院時に家族より患者の好みや自宅での飲水状況など情報収集をした。飲水チェック表・経過記録表は独自に作成した。研究メンバーが介入、メンバー不在時には各担当スタッフへ依頼した。飲水チェック表へ飲水したものと量、経過記録表に飲水量、表情・言動、対応、環境などを介入後すぐに記録した。介入前2 週間は通常の病棟でのケア方法で行い飲水量を記録し、その後42 日間介入し毎食時、10 時、おやつの時間、寝る前に本人の嗜好に合わせて飲水を勧め記録した。データ分析方法は、研究前後で飲水量を比較し変化をみた。経過記録表の内容から、飲水量アップできている方法を分析した。倫理的配慮は倫理委員会の承認を得た。患者家族へ研究目的や方法を文書と口頭で説明し同意を得た。【結果】介入前2 週間は主にお茶や白湯のみで、拒否があり飲水量1 日平均274ml だった。長男から入院前はビタミン補給飲料を飲んでいたと情報を得た。A 氏からは甘い物が好みであり、栄養状態も考慮し介入後1 週目に経腸栄養剤処方となった。2 週目はジュースも勧めた。経腸栄養剤をコップに50mlくらいずつ小分けにすると摂取できた。介入後16 日目、ホールで他患者の大声に恐怖を訴え飲水拒否が強くなった。静かな部屋へ移動しベッドアップ60 度で経腸栄養剤を100ml スムーズに摂取できた。姿勢を保つため、スタンダード車椅子からリクライニング車椅子60 度に変更し、経腸栄養剤やビタミン補給飲料を1度に100ml ずつ摂取できた。拒否の時は励まし、目線を合わせ声掛けをすると1 度に150ml 摂取し、開始4 週目は1 日平均748ml、7 ~ 8 週目は1 日平均867mlと水分摂取量が増加した。【考察】1.患者の好む甘い物を取り入れたことは、飲水量がアップした要因と考える。2.静かで安心できる環境、リクライニング車椅子60 度の姿勢、患者に目線を合わせ声かけをしながら、少量ずつ数回に分けて勧めたことで飲水量アップに繋がった。