第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演7群 患者の回復と生活の質の改善に向けた看護①

2022年11月8日(火) 11:30 〜 12:30 口演会場3 (304)

座長:田口 智恵美

[口演M-7-4] 術後に咽頭皮膚瘻をきたした喉頭全摘出患者の思いと看護師に求められるケア

高橋 周平1, 井上 舞香1, 数奇屋 美紗1, 硎野 由記子1, 宮村 歩1, 鍛冶 紗織1, 大田黒 一美1, 堀口 智美2 (1.金沢大学附属病院, 2.金沢大学医薬保健研究域保健学系)

キーワード:咽頭皮膚瘻、咽頭・喉頭全摘出術、看護師の関り

【抄録】
【目的】咽頭・喉頭全摘出術(以下「喉摘」)後に咽頭皮膚瘻(以下「瘻孔」)を合併した患者を対象に、手術前後での思いの変遷や瘻孔形成時、その治癒過程での思いを明らかにし術後看護師に求められるケアを検討する。【方法】研究デザインは質的記述的研究とし、インタビューガイドによる半構成的面接を行った。インタビューは筆談の場合にも対象の同意を得て録音し、筆談に使用した用紙は対象の同意を得て回収した。録音した内容と筆談用紙の内容から逐語録を作成し、術後に瘻孔形成した患者の思いに関連した内容を抽出し、カテゴリー化を行った。対象へ研究の主旨、参加の自由意志、プライバシーの保護等について、文章および口頭で説明し同意を得た。【結果】対象者の背景 対象者3 名、平均年齢76 ±5 歳 患者の思いとして、37 コード、19 サブカテゴリー〈〉と5 カテゴリー《》に集約できた。術前は〈死を免れるための決断をする〉〈同病者から手術後の自分をイメージできたが払拭できない不安を抱える〉《手術を決断し“ 今” に精一杯になり先をみる余裕が無い》、術後は《失声に直面し苦労する》、瘻孔形成後は《経口摂取の困難さに必死に対処する》《自分でどうする事もできない現実から逃れたいと切望する》《周囲の人との会話やぬくもりで救われる》が抽出された。【考察】患者は術前、先行きが見えない状況で不安を抱えている。同病者との交流は術後のイメージ形成に繋がるが《手術を決断し“ 今” に精一杯になり先をみる余裕が無い》状況にある。看護師はその状況を理解し関わる必要があり、同病者との交流をもてる場づくりが重要と考えられた。術後について、山内は声を喪失した頭頚部がん患者は伝える努力をあきらめてしまうほど伝えるすべがない、他者との関係性のなかで生きていこうとエネルギーを消耗させながら活動をしていると述べており、本研究においても同様の結果であり、《失声に直面し苦労》していた。思いを伝える事の困難さを理解し関わる事が必要と考えた。心身ともに消耗している中で瘻孔形成した患者は、心身のストレスが更に増大していた。その様な状況で、患者は《周囲の人との会話やぬくもりで救われる》経験をしていた。他者との関係はエネルギー消耗になるとあるが、本研究では他者との関係が心身のストレスの軽減に繋がると考えた。患者が伝えたくても伝えられない葛藤を抱いている事を理解し関わる事が必要と考える。