第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演8群 患者の回復と生活の質の改善に向けた看護②

Tue. Nov 8, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場3 (304)

座長:伊藤 恵美

[口演M-8-5] 外来がん化学療法で嘔気・嘔吐に苦しむ患者と歩んだ治療完遂までの看護実践

野田 安裕子, 大石 美栄, 徳山 博美, 松森 恵理 (関西医科大学附属病院)

Keywords:外来、化学療法、嘔気・嘔吐

【抄録】
【目的】外来がん化学療法を受ける患者がコントロール不良な嘔気・嘔吐症状を克服し治療を完遂できた一事例について、看護師のどのような実践が効果的であったのかを明らかにするために事例研究を行った。【方法】山本ら開発した「ケアの意味を見つめる事例研究」分析方法を基に、具体的に効果のあったと思われる看護実践について、語り合いを用いた質的分析の手法によって、看護実践のエッセンスを表す「大見出し」「小見出し」を作り、見出しと時期からなる表に整理した。「大見出し」「小見出し」が現場での実践を適切に表現できているかメンバー全員が納得できるまで語り合い修正を重ねた。【結果】本事例は、嘔気・嘔吐に苦しみながらも治療を完遂できた経過をたどったA 氏に効果的と考えられる看護実践について、7 個の『大見出し』と10 個の「小見出し」が得られた。看護師は『五感を澄ませて患者の様子を感じ取る』ことから関係性を築き始め、「患者のどのような決意も受け入れる覚悟をもってサポートし続ける」との思いを徹して関わり続けた。次第にA 氏は、治療に対する気持ちを看護師に赤裸々に語るようになった。それを機に、看護師は明らかになった予期性嘔吐に適した薬剤を投与しつつ『会話を通して知り得た不安要素の根絶』と同時に「今後の見通し、治療完遂における注意事項を説明」した。これらの関わりを通してA 氏は治療を完遂し、がんサバイバーとして新たな生活を歩みだした。【考察】患者が嘔気・嘔吐に苦しみながらも治療を完遂できた背景には、化学療法に伴う症状の把握と薬剤の適性や効果の判断は勿論のこと、看護師がA 氏に関心を寄せ、治療への意向を表出できるよう関わり、それを尊重する姿勢が存在した。抗がん剤治療期におけるがん看護には、「患者の症状や思いを表出させ、対応する」や「薬剤の効果や副作用のメカニズムを考慮した投薬」及び「治療及び療養における意思決定を支援する」役割がありその重要性は示唆されている。これらを実践の場で、患者の状況に応じて言葉かけや態度、環境調整など対応を変えながら実施できたことが重要であったと考える。今回の看護実践を振り返り、どのような場面においても患者の力を信じ、寄り添い、患者と共に苦悩しながらも、希望を持ち続ける関わりは、他の症例でも通ずる支援であると考える。