第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

講演情報

口演

口演14群 身体抑制・身体拘束低減への取組み

2023年9月30日(土) 10:30 〜 11:30 口演会場1 第6会場 (1008)

座長:井上 裕美子

[口演O-14-5] 急性期病院における身体拘束低減を妨げる要因の探索

―看護実践の自己評価アンケート結果から―

持田 奈津美, 鈴木 英子, 村田 文明, 野澤 陽子 (順天堂大学医学部附属静岡病院)

キーワード:身体拘束、看護実践自己評価、リスク回避

【目的】A 病院は、高度急性期の機能を有する地域支援病院である。身体拘束実施割合は、全国と比較して高い傾向にある。そこで、身体拘束の3 原則に着目し倫理教育を行ってきたが、その実施割合に大きな変化を認めなかった。昨年度の研究結果から、患者の安全とリスク回避の視点が優先されることが明らかとなった。このことから、倫理教育を中心とした看護教育が実践に結び付いていないのでないかと考えた。そこで、身体拘束実施の低減を妨げる要因を明らかにするため、看護ケアの実践に着目し、アンケート調査を実施したためその結果を報告する。【方法】A 病院に勤務する看護師を対象に、GoogleFormsを用いた自助式アンケートを実施した。看護実践能力自己評価(CNCSS)を参考に「自信がある、自信がない」の2 段階評価で作成した。「予防ケア」「せん妄ケア」「実施中ケア」「倫理」「教育」「自己研鑽」の6 項目47 の質問項目を作成した. 分析の過程で、過去に転倒転落やデバイスの自己抜去などのリスク経験の有無との関連性を比較した。分析は、χ2検定(SPSS Ver26)を用い比較し、有意水準をP<0.05 とした。アンケート結果は、個人が特定されないよう処理を行い配慮した。A 病院看護部倫理委員会の承認を得た実施した。【結果】看護師554 名の回答が得られた。身体拘束実施状況下でリスク発生を経験している看護師は約6 割、していない状況下では約8 割であった。項目別では「自己研鑽」で学会参加や最新知見に対して「自信がない」と回答した看護師の割合が半数以上いた. それ以外では「自信がある」と回答した割合が高かった。リスク経験の有無と自己評価の関連について分析すると、リスクを経験した看護師の方が、3 原則の評価や身体拘束の実施の判断に関わる項目で「自信がある」の回答が有意に多かった。【考察】リスク経験をしている看護師は3 原則の評価に対して自信があると答えた。この経験は、リスク回避に対する認識を強め、3 原則が揃っていれば身体拘束を実施してもよいとする認識となっていることが推察される。また、項目別の「自己研鑽」に対して「自信がある」と答えた割合が低いことからも、能動的にケアの方策を考え実践するというより、従来の部署のやり方が伝承されている可能性がある。そのため、看護師の身体拘束実施に対する認識を変容させていく必要がある。