第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演13群 看護職間・他職種との協働③

2023年11月8日(水) 10:30 〜 11:30 第9会場 (G316+G317)

座長:池袋 昌子

[口演Y-13-5] 多発重症褥瘡のある脊髄損傷の療養者に対する長期に及ぶ支援

―家族間の調整と連携―

松脇 孝太郎1, 間宮 直子2 (1.済生会吹田病院東淀川訪問看護ステーション, 2.済生会吹田病院)

キーワード:褥瘡、家族間の調整、連携、長期の支援

【目的】多発重症褥瘡のある脊髄損傷の症例を受け持ち、7年間の療養生活を支えて、治癒に結び付けた関わりを検証する。【方法】事例研究。A氏男性、姉と同居。L1損傷の下半身完全麻痺がある。両座骨、左大転子部、仙骨部にDESIGN-R分類D3~D5の褥瘡があり、姉の支援も含めて訪問看護が介入した。看護記録を振り返った。A氏と姉に発表の趣旨を説明し、承諾を得た。また、所属施設の倫理委員会の承認を得た。【結果】A氏は、褥瘡が停滞、悪化すると不安と焦りが強くなり、軟膏を変えていた。説明しても行動は変わらず、不安の表れとして捉え可能な限り許容した。A氏に褥瘡の写真を見てもらい、適切な軟膏の説明を行うと、軟膏を元に戻す行動もみられた。姉は褥瘡ケアを行い、創の状態で一喜一憂しており、積極的に取り組まないA氏を責めることがあった。A氏ができることは任せるように伝え続けた。A氏との心理的距離が保てると、A氏に褥瘡の処置を任せて、気が楽になったと話した。B病院の特定認定看護師と連携し、自宅で専門的なケアが行え、褥瘡は改善した。特定認定看護師のケアと助言は、A氏と姉に安心感を与えた。C大学病院の形成外科が紹介され、姉の希望で2か所の病院に通院した。C大学病院では巨大不良肉下等の切開、B病院では壊死組織のデブリードメントが行われた。両病院からは、自宅で療養生活を続けられているのは訪問看護が支えているからという話をA氏と姉に常にしてくれていた。訪問看護師は、創の著しい悪化により自宅でのケアに大きな不安を抱いたが、特定認定看護師の助言で、創を洗い続けるしかないこと、感染をさせないことを目標にした。C大学病院での皮弁形成術で、7年の経過を経て褥瘡は治癒した。【考察】長期間にわたる褥瘡ケアは、様々な負担を強いる。治癒しない状況や褥瘡の再燃で不安や焦りが生じ、希望が持てず疲弊する。家族の人間関係も悪化してしまい、褥瘡ケアが滞り、治癒に必要な良好な環境が維持できない。今回、訪問看護が長期間の褥瘡ケアの支援を行うことで家族の特徴を理解し、家族の人間関係を調整することができた。家族が適度な距離感をもって接することで、お互いを信じ、長期に及ぶ褥瘡ケアを維持することができたと考える。また、特定認定看護師の連携と医師の訪問看護に対する信頼は、療養者と家族に安心感を与え訪問看護師にも支援し続ける力を与えたと考える。