第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演22群 健やかに生まれ育つことへの支援②

Wed. Nov 8, 2023 1:15 PM - 2:15 PM 第11会場 (G319)

座長:渡邊 典子

[口演Y-22-4] 施設助産師の母子支援の役割

―社会的ハイリスクを抱える初産婦への支援を振り返って―

佐藤 美穂子 (JA 秋田厚生連雄勝中央病院)

Keywords:社会的ハイリスク妊産婦、施設助産師の役割、切れ目のない支援

【目的】社会的ハイリスクを抱える初産婦に対して行った援助を振り返り、施設助産師の母子支援の役割を明らかにすると共に今後の課題を見出す。【方法】研究デザイン:事例研究。研究対象:社会的ハイリスクを抱える20歳代の初産婦A氏。妊娠中はB医院で健診を受けていたが、総合病院での分娩が望ましいとされ、妊娠38週にC病院に紹介となった。分娩期から産後1ヶ月健診まで担当助産師が継続して行った援助を振り返り、社会的ハイリスクを抱える妊産婦ケアの施設助産師の役割について考察した。今研究はC病院看護部の倫理審査会で承認を受け、本人に文書を用いて説明し同意を得た。【結果】A氏には、夫が生活費を入れない事による経済的問題や、夫が非協力的で実母は飲酒癖がある為家庭内に育児支援者がいない等の家庭的問題があり、「家族には頼れない。自分で何とかする、でも心配。」と話していた。A氏が社会的支援を活用しながら安心して育児ができ、児が順調に成長発達していく事を目標とし、家族への直接介入を望まなかった為、本人のみへのアプローチとした。入院中は、不安を溜め込まない様に話をする機会を多く設けて信頼関係の構築に努めた。育児支援の不足に対する不安が聞かれた為、1ヶ月健診までの間に3回の母乳外来を設定し、担当助産師が家庭内の状況や育児上の不安を傾聴した。退院時や母乳外来時の情報は地域の保健師に伝え、地域の保健師からも訪問時の様子を聞き情報共有を行った。1ヶ月健診時、児の成長発達は順調で愛着形成も良好であった。A氏からは、「沢山話を聞いてもらえて良かった。一人だったらおかしくなっていたかも。今後も色々保健師さんに相談します。」との言葉が聞かれた。今後も継続的な母子支援が必要と考え、保健師に相談し、同意見であり電話や訪問が継続となった。【考察】今回、担当助産師が1ヶ月健診まで継続的に関わりを持った事がA氏との信頼関係の構築、想いの表出に繋がった。また、病院と地域が連携し問題点や必要な支援を情報共有できた事は、社会から孤立する事なく育児するA氏の一助となったと考える。妊娠期から地域と共に支援し、退院後も確実に地域に繋げていく「切れ目のない支援」が母子支援には必須であり、その橋渡しが施設助産師の重要な役割であると再確認した。様々なリスクを抱える母子が安心して生活できるよう地域との連携をより強化していく事が今後の課題である。