第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演25群 医療安全

2023年11月9日(木) 09:00 〜 10:00 第5会場 (G303)

座長:池田 美里

[口演Y-25-5] 在宅気管切開ケア児の安全管理に関する現状調査

荒川 つくし, 吉武 和代, 江口 奈美, 川口 めぐみ, 田家 由美子 (大阪母子医療センター)

キーワード:在宅気管切開、小児、安全管理

【目的】小児の気管切開は、カニューレの事故抜去や閉塞など生命に直結しやすいため、家族に医療者と同様の安全管理が求められる。A病院では、家族が外出先にアンビューバッグを携帯しておらず、急変時の対応が遅れたケースを経験した。そこで、在宅気管切開ケア児(以下、気切児)の安全管理に関する現状調査を行い、問題点を明らかにするとともに、在宅移行後も家族が気切児の安全管理を重視したセルフケアを確立できる支援を考えることとした。【方法】A病院の18歳以下の気切児34名の家族に対し、支援者の有無、安全面に関して気を付けていること、事故やヒヤリハットの有無、必要物品の管理方法などの項目について、構成面接を行った。分析は、項目ごとに類似した内容をまとめ、事故についてはPm-SHELL分析を行った。倫理的配慮として倫理委員会の承認を受けて実施した。【結果】安全面で気を付けていることは、事故抜去28件、物品管理24件、カニューレ閉塞23件であった。必要物品を常時携帯していたのは半数であった。事故抜去、閉塞事故、ヒヤリハットの経験者は24名であった。Pm-SHELL分析の結果から、P:患者は「本人の協力や理解を得ることが難しい」、m:管理は「首紐交換を一人で実施する」、S:ソフトウェアは「事故抜去しても本人の病状に変化がなければ様子を見る慣習」、H:ハードウェアは「小児用カニューレがカフ無しで短い」、E:環境は「首紐交換時」、L:当事者は「コミュニケーション不足」、L:当事者以外は「支援者がいない」などの原因がみられた。【考察】家族の安全管理に関する意識が高いにも関わらず、事故は発生している。安全管理の問題としては、小児の発達段階や特徴、生活環境、小児用カニューレの特徴、コミュニケーション不足による思い違い、本人の病状に変化がなければ様子を見るという慣れからくる誤った判断や危機意識の低さが考えられた。医療者は、気切児の状況に応じて、マニュアル通りに実施できているかの確認や訪問看護師との連携など、安全管理が継続できるよう支援しているが、家庭内で実際に行われている安全管理との間には差がみられた。看護師は、在宅移行後の気切児の成長発達や家族の生活環境の変化に即した対応などをふまえて、どのような場面で事故が起こっているかを防止対策とともに具体的に示し安全管理の支援を継続できるよう関わる必要がある。