第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演29群 周術期の看護②

2023年11月9日(木) 14:30 〜 15:30 第6会場 (G304)

座長:遠藤 篤也

[口演Y-29-1] 手浴が術後患者の自律神経系に与える影響

中野 元1, 池上 萌絵1, 四十竹 美千代1, 斉藤 沙織2, 斉藤 留美2, 長島 春美2, 小栗 久恵2, 林 孝枝2 (1.城西国際大学看護学部看護学科, 2.大網白里市立国保大網病院)

キーワード:手浴、術後回復、自律神経系、清潔ケア

【目的】中野ら(2021)は実験的に交感神経活動が優位な状態を誘発し湯温39℃の手浴を実施することによって交感神経活動が抑制される効果を明らかにした。また、手術後は臓器機能に対する要求が高まりストレス反応によって交感神経系が優位となり精神的ストレスや消化器症状など身体に悪影響を与えると示唆されている(Kehlet et al, 1997)。しかし術後の患者に対し手浴を行い、自律神経系の変化を調査した報告はない。本研究では、術後患者に対し手浴が交感神経系を抑制するかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象施設にて選定され研究の同意を得られた消化器の術後1 ~2 日目の患者10 名(男性7 名、女性3 名:年齢64.9 歳±16.3(mean ± SD))対象とした。セミファーラー位を保持した状態で実験を行った。患者は2 分以上安静座位を行い状態が安定した後、両手を湯に橈骨茎状突起まで浸け39℃の手浴を3 分間行い、手浴終了3 分間安静を行った。その間、心拍変動解析用ソフトを用いて解析を行いLF/HF 成分を交感神経活動の指標、HF 成分を副交感神経活動の指標とした。収集したデータは手浴前2 分間の平均値と手浴後3 分間の平均値をWilcoxon の符号付順位和検定を実施し有意水準0.05とした。対象者には、文書と口頭にて説明を行った。また、研究への参加は自由意志であり、拒否した場合でも不利益を被ることはないことを文書と口頭にて説明し同意を得た。【結果】手浴前のLF/HF は4.11(5.29 ~ 2.14)(以下:中央値(四分位範囲))であり、手浴後は1.39(3.06 ~ 1.10)と有意な低下を認めた(p < 0.05)。また、手浴前のHF は27.42msec2(80.72 ~ 5.69)であり、手浴後は17.42 msec2(88.69~ 3.95)であり有意な差を認めなかった。【考察】お湯による温かさは体温調節に影響を与え交感神経系を抑制する可能性が報告されている(Cui et al, 2022)。手浴前の患者の交感神経指標であるLF/HF は高値を示しておりストレス反応を示していると考えられた。手浴後にはLF/HF が有意な低下を示したことから手浴は術後患者に対しても交感神経系を抑制する可能性が示唆された。この結果は手浴が術後の交感神経系を抑制し精神的ストレスや消化器症状などを改善する可能性が示唆された。