第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演33群 業務改善に向けた取り組み

2023年11月9日(木) 14:30 〜 15:30 第7会場 (G312+G313)

座長:加藤 千恵

[口演Y-33-4] 陰部洗浄の効率化によるケアのゆとりを目指して

田中 奈緒子, 濱野 飛鳥, 松島 由実 (岡波総合病院)

キーワード:保清ケア、効率化、ケアのゆとり

【目的】泡沫状洗浄剤を用いた陰部洗浄を導入し、業務の効率化における看護ケアのゆとり創出を検討する。【方法】2022 年10 月から2023 年2 月の研究期間で、患者を対象に陰部洗浄に要する時間、物品や人件費の費用を比較するとともに、導入後のインタビューを行った。先ず、微温湯洗浄と泡沫状洗浄剤を用いた場合のケア時間について、2 名の同一患者に日を変えて計測し平均値を出した。準備・片付け時間は、洗浄、消毒薬浸漬、乾燥までの時間を2 日間計測し平均値を出した。患者1 人あたり物品代、陰部洗浄のケア人件費、1 日あたり準備・片付けにかかる人件費、消毒薬費用について比較した。また、実際に陰部洗浄を行う平均人数150 名/月のケア時間と費用を算出した。次に、半構造化面接法を用いて、看護職5 名に導入前後のケアのゆとりについてインタビューを行った。調査協力者には、研究の趣旨や目的、研究参加の自由意志尊重、匿名性の保持に関する説明を行い、同意を得て倫理的配慮を行った。【結果】泡沫状洗浄剤使用の陰部洗浄のケア時間は、患者1 名あたり2 分、月60 分短縮、準備・片付け時間は、1 日あたり19 分、月570 分短縮した。費用は、患者1 名あたりの物品代が32 円増加、陰部洗浄のケア人件費が82 円減少、1 日の準備・片付けにかかる人件費、およに消毒薬費用は378 円減少し、陰部洗浄を行う患者150名に対して32%減少した。導入後のインタビューでは「清拭時に患者との会話にゆとりが持てた」「準備や片付け時間がかからなくなった」「冷めたお湯を交換する作業がなくなった」という回答を得た。【考察】業務時間が短縮したことは、ケア自体に時間をかけるゆとりができ、観察や対話が充実できる。また、別の看護ケアに費やす時間が生まれると考える。インタビュー結果から、従来の陰部洗浄では微温湯を一定温度に保つことが困難であったが、泡沫状洗浄剤では温度調整が不要になり効率的になったと分析する。また、陰部洗浄にかかる費用対効果を得たことで、さらなる看護システムや物品に投入することができ、看護の質向上につながると考える。今回、泡沫状洗浄剤を用いた陰部洗浄は、業務の時間短縮と費用対効果の双方において有益であり、看護ケアゆとり創出につながったと考える。看護管理者は従来の慣習にとらわれず、自施設の現状と理想を明確にして、看護ケアを見直していくことが重要である。