第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演43群 継続教育①

2023年11月9日(木) 10:30 〜 11:30 第10会場 (G318)

座長:武末 磨美

[口演Y-43-3] 「健診機関に勤務する保健師のキャリアラダー(A県看護協会版)」 の効果と課題

―ラダー試行後のインタビュー調査から―

井上 雅子1, 中野 まどか2, 中山 佳津代2, 河合 絵利子2, 富田 早苗1 (1.川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健看護学専攻, 2.岡山県看護協会保健師職能小員会)

キーワード:健診機関、保健師、キャリアラダー

【目的】健診機関に勤務する保健師のキャリアラダーの試行により健診ラダーの導入、活用、評価に関する効果と課題を明確にすることを目的とした。本研究により健診機関に勤務する保健師のキャリア形成支援の充実に向けた示唆を得ることができる。【方法】健診業務の経験が3 年以上かつ健診ラダーA-3 レベルの保健師4 施設7 名を対象に半構造化面接による質的記述的研究を行った。インタビュー内容は、保健師の年齢、現任教育の現状等基本事項と健診ラダーの試行状況とした。健診ラダーの面接内容から逐語録を作成、Scriven, M. のプログラムの形成的評価の手法に基づき、ニーズ、デザインとセオリー、プロセスと実施、アウトカム/ インパクトの4 つの評価に整理し、コード化し、サブカテゴリー、カテゴリーを抽出し分析した。倫理的配慮は対象者に研究目的、方法、参加は自由意思であること、プライバシーの保護等について文書で説明して同意を得た。所属機関の倫理委員会で承認を得て実施した。【結果】対象者の年齢は37 ~ 43 歳、組織として保健師の現任教育は実施されていなかった。面接内容から332 コード、64 サブカテゴリー、17 カテゴリー(以下〈 〉カテゴリー)が抽出された。ニーズの評価では〈病院の健診部門の保健師であること〉〈限られた研修でのスキルアップ〉〈所属組織によって異なる保健師業務〉、デザインとセオリーの評価では〈自己評価や次の目標設定に有益〉〈活動項目のわかりやすさの差異〉〈実際の保健師活動との紐づけが困難〉〈評価者、評価指標が不明〉、プロセスと実施の評価では〈保健師のキャリアに対する動機づけ〉〈健診ラダーを活用した自己研鑽〉〈上司や周囲からの支援体制〉〈組織的に活用できていない現状〉〈他者評価が困難〉、アウトカム/インパクト評価では〈キャリアアップのツールとしての活用〉〈健診ラダーと保健師育成マニュアルの連動〉〈健診保健師業務の可視化〉〈所属組織での健診ラダーの周知と理解が課題〉〈評価者・評価指標の明確化〉が抽出された。【考察】健診機関に勤務する保健師の教育体制は十分でなく、試行により健診ラダーへの期待が高まった。また、保健師のキャリアアップのツールとして、健診ラダーを活用できていた。健診ラダーの項目と実際の保健師業務との紐づけが容易になり、評価者および評価指標の明確化が可能になれば、組織的な運用が期待できる。