第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

ポスター

ポスター46群 看護職の心の働きとその対処④

2023年11月9日(木) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (G1-G4)

座長:北田 なみ紀

[ポスターY-46-6] 新人看護職員の心理的経過の実態調査

山﨑 智博 (新行橋病院)

キーワード:新人看護職員、人間関係、心理的変化

【目的】A 病院の新人看護職員の離職率は、全国新卒採用者離職率と比較しても高い。新人看護職員の離職には、臨床現場で必要とされる臨床実践能力と看護基礎教育で習得する看護実践能力との乖離が一因とされている。本研究では、2022年度にA 病院に入職した新人看護職員の心理的変化を調査することにより、A 病院の新人看護職員離職の要因を明らかにすることを目的とする。【方法】2022 年4 月に新規採用され、同年8 月に在籍している看護師を対象に、4 月から8 月までの気持ちの揺れについて無記名自由記載アンケートを実施した。対象者にはアンケートの回答を持って本研究参加に同意を得ること、アンケート回答後であっても、同意の撤回が可能であることを説明した。【結果】アンケートで集約された267 のコードを、肯定的意見と否定的意見に分類した。集約されたコード数は、否定的意見が常に多かった。さらにそれぞれの意見よりサブカテゴリ、カテゴリを抽出した。抽出した4 のカテゴリは環境(人間関係を含む)、学習、感情、将来像であった。4 のカテゴリの経時的変化を比較すると、肯定的意見では順位は変動するが、否定的意見では環境が常に上位であった。また将来像は、否定的意見で次第に順位を上げていた。肯定的意見の特徴として、サブカテゴリとして新たにコーピングが抽出された。【考察】A 病院の新人看護職員の心理的変化には、環境が大きく関与していることが明らかになった。新人看護職員が職場に定着するには、新人看護師が安心できる支援体制と、小さな成功体験や先輩看護師からの承認、ストレスへのコーピングが必要であることが示唆された。新人看護職員の離職につながる心理的プロセスは、職場環境への適応・人間関係構築の困難からはじまり次第に看護技術習得困難・自己学習が負荷となる。自己効力感・自己肯定感の低下がさらに先輩看護師との関係を悪化させ、心身のバランスを崩し離職へつながっていくことが推察された。新人看護職員を受け入れるにあたり、看護技術・業務習得ばかりを目標とするのではなく、まずは人間関係の構築ができるサポートをすることが新人看護職員の定着につながると推察できる。いずれにしても受け入れる側の課題ばかりではなく、新人看護職員側の課題にも目を向け、メンタリティを高める研修を通して精神的支援を試みていきたい。