第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-4] 一般演題:地域 4

Sat. Sep 17, 2022 11:20 AM - 12:20 PM 第3会場 (Annex2)

座長:中本 久之(帝京平成大学)

[ON-4-4] 口述発表:地域 4リエイブルメント

~訪問型サービスCを活用した自立支援~

古谷 正登1小林 努1原 直利2 (1三田尻訪問看護ステーション,2山口県立総合医療センターリハビリテーション科)

【はじめに】2017年度より全国の市町村で介護予防・日常生活支援総合事業への移行が始まり,山口県防府市でも2020年度より通所型サービスC(短期集中予防サービス)が本格実施されている.一方で対象者の中には通所型サービスを好まず事業に参加しない者も一定数存在する.そこで今回リエイブルメントの視点を基に訪問型サービスC(以下:訪問C)のモデル事業として関わった事例をここに報告する.なお,本報告については本人に対して紙面にて説明し同意を得ている.
【事例紹介】80代男性.事業対象者.身辺自立.X年6月脳梗塞にて近隣の病院へ2週間程度入院となる.退院後,麻痺は軽微だが元々行っていた農作業や友人とのゴルフにも行かず引きこもったため家族が心配して訪問C導入となる.なお訪問Cの概要としては,要支援1・2又は事業対象者に対して,介護予防活動や社会参加に繋げる目的で実施され,1回60~90分程度で全12回(3ヶ月実施)である.
【評価】X年11月より介入を開始.対象者にはリエイブルメントの視点を基に,対象者自らによるセルフマネジメント力を高める事が出来るように面談を行った他,本人が元々行っていた「ゴルフ」「農作業」に着目し作業活動へ直接的なアプローチを行った.初期評価に関して,CS-30:9回,TUG:通常歩行16.3秒,最大歩行13.6秒,片脚立位:右1秒,左0秒であった.MTDLPの合意目標としては,①「ゴルフコース18ホールを廻る事が出来る」(実行度5/10,満足度3/10),②「畑の周りの草刈りを行う事が出来る」(実行度0/10,満足度0/10).活動状況に関して,屋外ではふらつきがみられ,ゴルフを再開したが9ホール程度廻ると腰の重さが生じ歩けなくなる状態であった.
【経過及び結果】初回訪問時に運動の習慣化として,「(外出するために)1日1回靴を履く」「スクワット」という生活目標を意識できるように「目標シート」を渡し,スクワットはカレンダーにチェックする等セルフマネジメントしていけるよう共有した.その後スクワットを日課として取り入れるだけでなく,自ら住民主体の通いの場に参加し始めるなど行動変容が見られた.訪問時には本人と自宅の庭の剪定や刈払機での草刈り作業等を共に行う事で「もう自分のことを病人とは言えなくなった」「草刈りは出来る」等の発言が聞かれた.日常生活でも,ゴルフのスイング練習や車での外出を毎日行うなど活動性が向上していく事でゴルフコース18ホールを廻る事が可能となった.訪問の終盤には「卒業ゴルフ大会」を企画し長男や知人,OTも参加しゴルフコースをラウンドし訪問Cの卒業を迎えている.最終評価は,CS-30:15回,TUG:通常歩行13.2秒,最大歩行10.9秒,片脚立位:右2秒,左3秒.合意目標①「ゴルフ」(実行度5/10,満足度3/10),「草刈り作業」(実行度7/10,満足度3/10).
【考察】入院を契機に自宅に引きこもるなど不活発な生活に陥り下肢筋力や耐久性低下など負の循環が見られていたため,「1日1回靴を履く」「スクワット」という運動習慣の再獲得を通して,3か月後には「ゴルフコース18ホールを廻る事が出来る」という目標を共有した.本人の強みとして,地域の世話人を長年行っており繋がりも多いため地域活動も並行して取り組んでいく事で全体的な活動量を担保していけると考えた.訪問時には農作業やゴルフのスイングなど実際の作業活動へ直接介入を行うplace-train-modelを活用し,「出来る」事と「課題」をその場で共有・フィードバックしていく事で自信の再獲得に繋がった.このようにリエイブルメントの視点を基に関わった事で行動変容へと繋がり「元の生活へ戻る」一助となったと考えられた.