第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-7] 一般演題:地域 7

Sat. Sep 17, 2022 3:10 PM - 4:20 PM 第3会場 (Annex2)

座長:宮寺 亮輔(群馬医療福祉大学)

[ON-7-6] 口述発表:地域 7高齢者における通いの場への参加・プログラム種類数と高次生活機能

~JAGES2016-2019縦断研究~

山口 佳小里1井手 一茂2横山 芽衣子2辻 大士23近藤 克則24 (1国立保健医療科学院,2千葉大学,3筑波大学,4国立長寿医療研究センター)

【序論】本邦では,ポピュレーション戦略に重点を置いた介護予防が進められている.その具体策の1つとして通いの場づくりが多くの市町村で推進され,近年,作業療法士をはじめとするリハビリテーション専門職の関与による介護予防強化への期待が高まっている.高齢者における通いの場への参加による予防効果に関して,参加することでフレイルや要介護認定,認知症発症等のリスクが軽減することが報告されている.一方で,実施されるプログラムの種類数による予防効果の違いは明らかとなっていない.
【目的】高齢者における通いの場への参加及び通いの場で実施されるプログラムの種類数と,その後の高次生活機能との関連を検証することを目的とする.
【方法】日本老年学的評価研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)の28市町村のデータを用いた縦断研究である.分析対象は2016年度の通いの場関連項目に回答し,2016,2019年度の2時点の自記式郵送調査に回答した要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者9,611人のうち,分析に用いた変数に欠損のあった3,547人を除外した6,064人(平均72.5±5.3歳,男性3,115人)とした.目的変数は2019年度の高次生活機能(老研式活動能力指標13点満点を自立,13点未満を非自立と定義)とした.説明変数は2016年度の通いの場の参加状況(参加あり・なし)と,プログラム種類数の2パターンで分析した.プログラム種類数は通いの場で実施しているプログラムの種類(健康体操,創作活動,健康講和,世代間交流,音楽活動,お茶とおしゃべり,文化活動,脳トレーニング,室内ゲーム,その他の10項目)を尋ねてその数を集計し,通いの場参加なし,1種類に参加,2種類に参加,3種類以上に参加,不明(通いの場に参加ありと回答,プログラム種類に関する項目に未回答)の5グループに分類した.調整変数は2016年度の性,年齢,等価所得,教育歴,婚姻状況,独居,就業状況,うつ,治療中の疾患,高次生活機能とした.統計解析は,ポアソン回帰分析(有意水準5%,強制投入法)を用い,incidence rate ratio (IRR),95%信頼区間(confidence interval: CI),p値を算出した.統計ソフトはStata 17/SE用いた.本研究は千葉大学等の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には書面で説明し同意を得た.
【結果】2019年時点の高次生活機能低下は3,866人(63.8%),2016年時点の通いの場参加は959人(15.8%),プログラム種類数は,1種類352人(5.8%),2種類166人(2.7%),3種類以上177人(2.9%),不明264人(4.4%)であった.参加なしを参照群とした高次生活機能非自立のIRRは,参加ありで0.87(95%CI: 0.82- 0.92,p<0.001)であった.プログラム種類数では,参加なしを参照群とし,1種類0.92(0.84- 1.00,p=0.050),2種類0.82(0.70- 0.95,p=0.008),3種類以上0.80(0.69- 0.93,p=0.003),不明0.88(0.79- 0.97, p=0.010)であった.
【結論】28市町村の高齢者を対象とした分析の結果,通いの場に参加し,2種類以上のプログラムを実施している高齢者は,3年後の高次生活機能が非自立となる可能性が低かった.通いの場の機能強化に作業療法士が関わる上で,通いの場への参加を促進するとともに実施されるプログラムの種類数を増やす関わりが重要であることが示唆された.