第56回日本作業療法学会

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一般演題

管理運営

[OQ-1] 一般演題:管理運営 1

Fri. Sep 16, 2022 1:20 PM - 2:20 PM 第5会場 (RoomB)

座長:小川 真寛(神戸学院大学)

[OQ-1-1] 口述発表:管理運営 1回復期リハビリテーション病棟作業療法部門における課題分析

~Quality Evaluation Strategy Tool(QUEST)を用いた実践~

崎本 史生1菊地 理仁1田中 康介1池畑 清美1大庭 潤平2 (1神戸リハビリテーション病院,2神戸学院大学)

【はじめに】作業療法(OT)の質と評価ツール(Quality Evaluation Strategy Tool:QUEST)は,OTの価値をデータに基づいて体系的に示すために,世界作業療法士連盟が開発したツールである.QUESTはOTを行う環境,提供するサービスの種類,提供する集団に関わらず,すべての領域で使用できるよう設計されており,その運用目的は,専門職としての責務であるOTサービスの質の継続的な向上である.今回,本評価の実施に際してOT部門長を含む管理職4名とアドバイザー1名の計5名でコアチームを結成し,当院回復期リハビリテーション病棟OT部門の現状を分析したため報告する.
【方法】QUESTの手続きを示す.OT部門の課題にはSWOT分析を用い,OTスタッフ27名に対してwebアンケート(Google Forms)を実施した.アンケートの結果は,定性分析を行い,QUESTで定められている7要素(適切性・持続可能性・アクセシビリティ・効率性・有効性・満足度・安全性)のカテゴリに分類する.カテゴリ化された結果は,コアチームで確認し合意が取れるまで修正した.その後,提供されるOTサービスに期待されること,期待に対しての結果を評価する指標を作成する.
【結果】アンケート回収率は100%であった.SWOT分析に従いQUESTの7要素について,当院OT部門に求められる検討事項を示す.《適切性》では,委託業務や法人内の施設に関する情報共有があまり行えておらず人的資源を十分に活用できていない.《持続可能性》では,人材育成システムの整備が行えておらず経験に差がある.《アクセシビリティ》では,認知機能やADL・IADL低下がある患者に対して,OTが提供できていない場合がある.《効率性》では,新たな評価バッテリーやリハビリ機器の使用率が低く,資源を十分に活かしきれていない.《有効性》では,エビデンスのあるリハビリテーションの提供が不十分.《満足度》では,コロナ禍により,家族面会やOT場面の見学機会が減少している.《安全性》では,内部疾患等の急変対応を要する患者へのリスク管理能力が不十分,という7要素が挙がった.結果に基づいた評価指標では,《適切性》は,院内・院外のスタッフとの研修会等の開催数を計算する.《持続可能性》では,クリニカルラダーを作成し,経験年数における課題を設ける.《アクセシビリティ》では,OTの追加処方数を算出する.《効率性》では,評価・機器の使用方法に対する研修会の開催数を計算する.《有効性》では,生活行為向上マネジメントを活用したOT実践数を算出する.《満足度》では,OTプログラムに対する患者満足度を調査する.《安全性》では,OT介入中の有害事象の発生件数を算出する,等が評価指標として作成された.
【考察】QUESTの評価指標作成に対して行ったSWOT分析では,スタッフ自身が自己を振り返るきっかけとなり,現状の強みや弱み,課題等が考えられた.またこれらが明確となったことで,評価指標では具体的な計算式が算出することができ,OTサービスの効果判定が行える指標の作成に至った.QUESTは,コロナ禍に対してOTのあり方や「質」の改善に対する分析に用いられている(Hoel,2021).以上からも,現状の課題分析および今後の成果に対してQUESTの活用が期待される.今後の課題として,作成した評価指標をもとに効果測定を行い,その有効性を検証する必要がある.
【参考文献】
世界作業療法士連盟:QUEST作業療法の質を捉えた評価指標(QI)の活用ガイド(日本語)