第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-11] ポスター:脳血管疾患等 11

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-11-9] ポスター:脳血管疾患等 1180歳以上の脳卒中患者へのリハビリテーション量とADL能力向上の関連性

石森 卓矢1荻原 達也1野本 正仁1腰塚 洋介1美原 盤2 (1公益財団法人脳血管研究所 附属美原記念病院リハビリテーション部,2公益財団法人脳血管研究所 附属美原記念病院脳神経内科)

[はじめに] 80歳以上の高齢者に対するリハビリテーション(リハ)において,6単位を超える単位数の提供を過剰とし,7単位以上実施した単位を減額査定となっていることが指摘されている.80歳以上の高齢者はリハ効果が乏しいとの想定のもと,一律に減額査定されているとも思われるが,80歳以上の高齢者に対するリハ量とその効果の関連性については明らかになっていない.そこで今回,80歳以上の脳卒中患者へのリハ量とADL能力向上の関連性について分析したので報告する.
[対象] 平成25年6月以降に当院回復期リハ病棟に入院し,令和2年3月までに退院した脳卒中患者1939名の内,入院時80歳以上の患者600名(男性251名,女性349名,年齢85.2±3.8歳)を対象とした.疾患の内訳は脳梗塞451名,脳出血130名,クモ膜下出血19名であった.説明と同意に関しては,インフォームドコンセントを省略する代わりに,当法人ホームページにて研究情報を公開し対象者が拒否できる機会を保障し,当法人倫理委員会の承認を受けた(受付番号110-02).
[方法1] 1日あたりのリハ合計単位数,PT単位数,OT単位数,ST単位数と FIM利得点数について,それぞれSpearman の順位相関係数を求めた.
[結果1] 1日あたりのリハ合計単位数,PT単位数,OT単位数とFIM利得点数について,有意に相関関係を認めた.相関係数は,リハ合計単位数が 0.2,PT単位数が0.3,OT単位数が0.19であった(p<0.05).
[方法2] 対象を,FIM合計点数のMinimal Clinically Important Difference(MCID)である22点以上の変化があった群を改善群,22点以上の変化を認めなかった群を維持群として2群に分けた.2群間において,先行研究にてFIM利得点数の影響因子として報告されている発症から入院までの日数,入院時FIM合計点数の差を確認した後,1日あたりのリハ合計単位数,PT単位数,OT単位数,ST単位数の群間比較を行った.統計解析はMann-WhitneyのU検定を用いた.
[結果2] 改善群は174名,維持群は426名であった.両群間における発症から入院までの日数と入院時のFIM合計点数は有意差を認めなかった.1日あたりのリハ合計単位数(改善群6.7単位,維持群6.5単位),PT単位数(改善群3.2単位,維持群2.9単位),OT単位数(改善群2.7単位,維持群2.5単位)は,改善群が維持群に比べ有意に多かった(p<0.05).ST単位数においては,改善群0.9単位,維持群1.1単位で改善群が維持群に比べ有意に少なかった(p<0.05).
[考察] 1日あたりのリハ合計,PT,OT単位数とFIM利得は相関関係を認め,FIM点数の改善を認めた患者のリハ合計,PT,OT単位数は,改善を認めなかった患者に比べ有意に多かった.80歳以上の高齢者は加齢による心身機能低下を抱えていることが少なくなく,これに加えて脳卒中による後遺症を呈した場合,自主練習の実施やADL拡大に向けた主体的な活動が困難になると思われる.今回の結果から,主体的に活動範囲を拡大することや運動することが難しい80歳以上の脳卒中患者においてこそ,運動とADL拡大を推進するPT,OTのリハ量を担保することが重要であると思われる.すなわち,80歳以上の脳卒中患者のリハ量を担保することに対して,年齢で一律にレセプト減額査定をすることは適切ではないと思われる.