第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-1] ポスター:がん 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PF-1-4] ポスター:がん 1当院における作業療法部門のがんリハビリテーション~がんリハビリテーション研修終了作業療法士の増加による実績報告~

久保 美帆1原田 洋一1羽倉 千夏1多田 弘史1 (1独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院リハビリテーション科)

【はじめに】
当院は548床を有する地域がん診療連携拠点病院であり,組織で計画的にがんリハビリテーション(以下リハ)研修をすすめてきた.作業療法部門は研修終了者が,2018年度2名から2021年6名(在籍者全員)となった. がんリハ研修を終了した作業療法士が増えた事によりがんを主病名とした入院患者の作業療法の提供が充実しつつあり,その実績を報告する.本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【対象と方法】
診療録より後方視的調査をおこなった.2018,2021各年の4月から10月にがんを主病名として作業療法処方のあった患者を対象とした.
1.2018年と2021年の作業療法処方比較
処方件数,算定種別,性別,年齢,依頼診療科,がん臓器別を調査.
2.2021年作業療法実績
リハ目的別にDietz分類,回復的リハ,維持的リハ,緩和的リハに分け,人数,年齢,転帰,日常生活動作 (以下ADL)評価としてFIM運動, FIM認知点数を調査. FIM点数はWilcoxon符号付順位和検定にて開始時終了時を比較した.
【結果】
1.2018年と2021年の作業療法処方比較
2018年:処方19件(算定種別:がん6,脳血管10,運動器2,呼吸器1).性別男8女11名.年齢65.5±6.4歳.依頼科計7科(脳神経外科8,呼吸器内科5,血液内科2,他).臓器別計5部位(脳11,肺4,血液2他).
2021年:処方69件(算定種別:がん48,脳血管11,運動器3,呼吸器6廃用1). 性別男31名女38名.年齢72.4±12.3歳.依頼科計11科(呼吸器内科19,乳腺外科12,消化器内科12,血液内科6,脳神経外科5,緩和ケア科5,他).臓器別15部位(肺17,乳腺13,脳10,肝5,血液3,胃3,膵3他).
2.2021年作業療法実績
回復的リハ:25 名68.0±14.2 歳. 自宅退院23 件, 転院2 件.FIM 点数( 開始→ 終了), 運動64.9±18.7→76.8±25.1(P<0.05有意差あり)認知31.1±7.8→32.9±4.8(有意差なし).
維持的リハ:33名75.1±10.1歳.自宅施設退院26件,転院4件,死亡3件.FIM点数(開始→終了),運動62.4±23.2→68.2±23.0(有意差なし)認知29.6±6.9→30.1±6.3(有意差なし).
緩和的リハ:11名74.5±9.0歳.転院3件,死亡8件. FIM点数(開始のみ),運動31.9±15.3,認知26.1±6.6.
【考察】
組織で計画的にがんリハ研修をすすめ,同行した医師看護師にがんリハの必要性が理解されたこともあり作業療法処方数が増加した.2021年処方,依頼科,対象となるがん臓器種類は急増したが,がんリハ算定できる作業療法士も増加したため十分対応でき,がん患者における作業療法提供が充実しつつあるといえる. 2011年FIM点数調査から,自宅退院者の多い回復的リハ対象者のADL向上,維持的リハ対象者のADL維持に貢献できていると考える.また,作業療法士が必要時に緩和的リハに介入できるようになったことも大きな成果である.3年の経過で対象者が65.5→72.4歳と高齢化している.今後,高齢者がん患者に対する部門内教育の充実が必要である.