第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-5] ポスター:精神障害 5

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PH-5-2] ポスター:精神障害 5うつ病とパーキンソンニズムを合併した患者の精神科作業療法

樋之津 健二1石川 真悠子2藤原 雅樹2竹之下 慎太郎2山田 了士3 (1岡山大学病院総合リハビリテーション部,2岡山大学病院精神科神経科,3岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学)

【序論・目的】うつ病の生涯有病率 は5.7%(川上)であり,薬物療法と休息により寛解に至るが,一部は治療抵抗性となり症状が遷延する.うつ病患者におけるパーキンソンニズムの合併率は不明であるが,薬剤性もしくはパーキンソン病等の神経変性疾患を原因として生じることがある.治療抵抗性うつ病とパーキンソンニズムには電気けいれん療法(ECT)が有効である(Moellentineら,Takamiya
ら).うつ病とパーキンソンニズムを合併した患者の精神科作業療法(OT)について報告する.
尚,本発表において本人から書面にて同意を得ている.開示すべきCOIはない.
【事例紹介】70歳代女性,うつ病.抑うつ気分,思考制止,精神運動制止を呈し,四肢固縮,動作緩慢,仮面様顔貌のパーキンソンニズムを認めた.入院時よりアリピプラゾールによる薬剤性 パーキンソンニズムを考慮し被疑薬を中止したが遷延した.1年間遷延するうつ症状とパーキンソンニズムの改善目的にECTを実施した.
【作業療法評価】主訴は読書できない(意欲低下),持久性低下と左腕が上がらない. DAY3により支持的精神療法,歩行訓練,関節可動域訓練を開始した.
【経過】DAY1:被疑薬を中止.DAY3:OT開始,HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度17項目):23点,BDI(ベックうつ病調査表):35点.UPDRSⅢ(Unified Parkinson's disease rating scale part Ⅲ):42点,片脚立位:右左2秒,5m歩行:7.9秒,握力:右7.1㎏・左6.3㎏.左肩関節屈曲90度・外転90度.連続歩行距離:80m.DAY8:UPDRSⅢ:35点,自主的な歩行訓練あり,笑顔あり表情はやや改善だが瞬きが少ない.DAY10:自然な笑顔あり.DAY15:UPDRSⅢ:32点,片脚立位:右7.8秒・左10.9秒,5m歩行:5.1秒,肩関節屈曲左125度・外転110度.四肢固縮改善(右<左)するも残存.DAY18:ECT開始.DAY29:読書に意欲を示す,連続歩行距離:200m.DAY32:UPDRSⅢ:13点,片脚立位:右15秒・左16秒,5m歩行:4.0秒,握力:右13.1㎏・左11.9㎏,言語改善,日常的に読書できる.DAY37:ECT終了(計5回),左肩関節屈曲160度・外転130度.DAY39:HAM-D:0点,BDI:2点.UPDRSⅢ:3点(瞬き少ない,両下肢固縮),両上肢固縮改善,動作緩慢改善.DAY46:UPDRSⅢ:2点(両下肢固縮),瞬き改善.DAY47:退院.
【結果・考察】うつ病とパーキンソンニズムを合併した患者ではECTによって両者の症状が改善することがあり,その精神科作業療法においては,精神症状のみならず運動機能障害の評価が重要である.また患者本人の生活行為を予後予測した心身機能改善が不可欠である.今後はパーキンソンニズムの原因が薬剤性かパーキンソン病等の神経変性疾患であるか精査する必要がある.