第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-6] ポスター:発達障害 6

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-6-4] ポスター:発達障害 6発達障害児における食具使用状況と姿勢制御の関連

山本 美咲12神作 一実2平田 樹伸1國友 淳子1大林 茂1 (1埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部,2文京学院大学大学院保健医療科学研究科保健医療科学専攻)

<背景と目的>
発達性協調運動障害を伴うと,高度な協応性を必要とする運動が苦手となりやすく,生活上の困難さを引き起こすとされている.その一つに食具操作がある.食具操作は,「スプーンやフォークを使ってほしい」「箸を使えるようになってほしい」など保護者からの希望が聞かれることが多い.また,発達障害児は,姿勢制御の未熟さを認めることも報告されている.発達障害児における食具操作能力と姿勢制御との関連が明らかになれば,食具操作に対するプログラムの立案に寄与することができると考える.
<対象と方法>
対象は2016年4月1日~2021年5月31日までの当院にて神経発達障害群の診断をされ,外来作業療法を行っている者とした(埼玉医科大学総合医療センター倫理委員会承認番号:総2021-125).
診療録から①片足立ち保持時間(開眼),②食具使用状況,③KIDS乳幼児発達スケール評価タイプT(以下,KIDS)結果,④診断名,⑤性別,⑥月齢,⑦出生体重,⑧歩行獲得月齢,⑨生育歴の情報を収集した.①片足立ち保持時間は日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(Japanese version of Miller Assessment for Preschoolers;以下,JMAP)から抜粋し,データを取得した.②食具使用状況は実際に動作評価を行い,先行研究を参考にI群をスプーン・フォーク回内持ち,II群をスプーン・フォーク鉛筆握り,Ⅲ群をエジソン箸・箸ぞうくんなどの箸操作が容易になるよう工夫されたもの,Ⅳ群を普通の箸使用し操作が不十分,Ⅴ群を普通の箸で自立の5群に分類した.分析には,SPSSversion26を使用した.分析内容は食具使用状況と月齢,片足立ち保持時間,KIDS総合発達年齢,KIDS下位項目年齢,片足立ち保持時間と月齢,KIDS下位項目年齢の関連をSpearmanの順位相関係数を用いて分析した.次に,食具使用状況の5群と月齢,片足立ち保持時間,KIDS総合発達年齢,KIDS下位項目年齢の差をKruskal-Wallis検定を用いて分析した.食具使用状況と発達指数の関係,片足立ち保持時間と発達指数の関係,片足立ち保持時間と歩行獲得時期の関係,片足立ち保持時間と月齢の関係,片足立ち保持時間とKIDS運動発達年齢の関係をクロス集計表にて分析した.有意水準は5%未満とした.
<結果>
対象は17名(男児12名,女児5名),月齢は平均59±11.8か月であった.KIDS発達総合指数の平均は60.6±20.5であった.①対象者全体の片足立ち保持時間は平均5.5±7.9秒であった.片足立ち保持時間をJMAPの年齢群の換算表で使用されている赤・黄・緑で分類し分析し,赤群は8人,黄群は4人,緑群は5人であった.以上の区分を使用したクロス集計表にて片足立ち保持時間に発達指数の関連は認められなかった.また,クロス集計表にて片足立ち保持時間が短い児は歩行獲得時期が遅いことが示された.②食具使用状況のI群は11人,II群は0人,Ⅲ群は3人,Ⅳ群は3人,Ⅴ群は0人であった.I群とⅤ群は該当者がいなかったため,Ⅰ群,Ⅲ群,Ⅳ群の3群が分析の対象となった.月齢について食具使用状況の3群を比較したところ,Ⅰ群とⅣ群で有意な差を認めた(p=0.027).また,片足立ち保持時間について食具使用状況のペアごとの比較をしたところ,Ⅰ群とⅣ群で有意な差を認めた(p=0.027).その他の分析では有意な相関や有意な差を認めなかった.
<考察>
今回,食具使用状況と姿勢制御には強い相関,食具使用状況および姿勢制御と月齢には相関があることが示唆された.このことから,リハビリテーションの時間で保護者からの希望の手指機能に重点的にアプローチするのではなく,姿勢制御の評価や練習からアプローチし,姿勢制御の向上に合わせて手指の運動機能へアプローチを行っていく必要があるのではないかと考える.