第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-3] ポスター:高齢期 3

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PJ-3-1] ポスター:高齢期 3ケアトランポリンを活用した効果的な介護予防プログラムの開発

西田 典史1荻山 泰地1 (1日本医療科学大学作業療法学専攻)

【はじめに】介護予防に関する取り組みは,各自治体で様々なプログラムが実施されている.最近では,要支援レベルの高齢者において,日常生活での移動能力を改善させる可能性がある運動器具として,ケアトランポリンが注目されており,自治体での介護予防教室でも導入されている.筆者らは,2016年にケアトランポリンを開発した当時より,代謝当量や筋電図の測定などを実施してきた.ケアトランポリン実施時の運動強度,運動時間,運動頻度,リスク管理といった運動プログラムを構築して,適切な方法で実施することが望まれる.【目的】そこで本研究では,安全で効率よく実施するため,運動の見本となるDVDを作成した.DVDに収録したケアトランポリン上での運動における筋の作用について分析することを目的とした.【方法】ケアトランポリン(日本ケアトランポリン協会)は,全高1110mm,マットの直径530mm,フレームの直径96mm,マットの高さ270mm,マットにはバネがついており,手すりを両手でつかんで跳躍ができる様式である.まず,運動の種類は,マット上での足踏みと弾み運動の2種類で構成した.足踏みと弾み運動のリズムは,100beat(100回/min)とし,足踏みは,①閉脚足踏み,②開脚足踏み,③片脚を前に出しての足踏みなど,20種類の段階に応じた足踏み運動を設定した.弾み運動は,①両足での弾み運動,②片脚を側方に蹴り上げての弾み運動,③体幹の回旋を交えた弾み運動など,20種類の段階に応じた弾み運動を設定した.足踏み運動と弾み運動の合計40種類の段階に応じた運動を設定し,インストラクターがケアトランポリン上で実演したものを約20分程度の映像として収録した.各運動での関節運動,作用する筋の名称,筋収縮の様態を目視による観察によって分析した.【倫理的配慮】本研究における情報収集および公表については,日本ケアトランポリン協会の許可を得て実施した.【結果】ケアトランポリン上での足踏み運動では,足の引き上げと軸足での踏ん張りの交互動作となり,股関節と膝関節の屈曲および伸展の関節運動であった.筋の作用は,腸腰筋(股関節屈曲)および大殿筋,大腿四頭筋(軸足での踏ん張り)であった.また,開脚動作が伴うことで,大殿筋(股関節外旋)や中殿筋(股関節外転)の作用が認められた.弾み運動では,大腿四頭筋(膝関節の軽度屈曲),下腿三頭筋(足関節底屈)および外腹斜筋(体幹の反対側回旋),内腹斜筋(体幹の同側回旋)の作用が認められた.【考察】ケアトランポリンでの足踏み運動と弾み運動における筋の作用を目視の観察により推定することができた.ケアトランポリン上で股関節および膝関節の屈伸を伴う跳躍動作は,床上でのスクワット運動と類似しているが,マットが沈み込むためにスクワット運動よりも低負荷と考えられる.また収縮様態としては,低負荷の遠心性収縮を生み出していると考えられる.そのため,要支援高齢者にとって適度な負荷であることが示唆される.今回作成したDVDをもとに安全で効率よくプログラムを実施し,今後は高齢者の心身状態や生活状態の変化にも着目して分析を進めたい.