第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-8] ポスター:高齢期 8

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PJ-8-1] ポスター:高齢期 8通所介護における個別機能訓練の効果

2年間の経過

高槻 聖子1 (1医療法人社団 尚仁会 デイサービスセンター「和」)

【序論】令和2年よりコロナウイルス感染拡大の影響により,高齢者は外出(活動)の機会が減り家族またその他の対人交流の場が少なくなった. 運動が継続できず,身体活動量が減少している高齢者が多く,新型コロナウイルス感染症の収束後に『要介護高齢者が増加』するといわれている.令和3年度の介護報酬改定では機能訓練士が直接個別機能訓練を実施することとなった.当デイサービスではこれらの状況を受け対象者の日常生活状況に応じた1対1での個別機能訓練を実施するとともに集団での体操を通じて利用者の身体機能・日常生活動作能力の維持・向上を図ることとした.コロナ渦での,当デイサービス利用者の身体機能・日常生活動作能力の2年間の経過を報告する.なお,発表にあたり利用者の同意は得ている.
【当デイサービス,機能訓練の概要】利用者定員1日あたり20名,機能訓練士は准看護師1名,作業療法士1名,言語聴覚士1名,理学療法士2名,1日あたり1.5~2.0名で実働している.訓練内容は令和2年度では週1回以上の個別機能訓練(1対1)に加え,毎回30分の集団体操(内容は主にストレッチと筋力強化・頭の体操)を行っていた.令和3年度はデイサービス利用日に個別機能訓練(1対1)と毎回30分の集団体操(内容はストレッチと筋力強化・頭の体操に加えて立ち上がり練習)を行った.令和2年度より言語聴覚士による摂食・嚥下機能・言語療法を実施し,口腔機能向上サービスの提供,令和3年度より栄養指導を適宜実施している.居宅訪問においては必要に応じて作業療法士が訪問し,入浴環境や住宅環境に対するアドバイスを行っている.
【方法】対象は令和2年1月~令和3年12月までデイサービスの利用を継続していた要介護者20名.手順は令和2年と令和3年6月,12月において利用者のBarthel Index(以下BI)を測定する.令和2年10月~12月,令和3年10月~12月の期間において居宅訪問を行った月に握力と体重を測定する.分析方法は令和2年6月と12月のBIを比較,令和3年6月と12月のBIを比較,令和2年と令和3年の握力と体重の比較をウィルコクソンの符号順位検定にて行う.統計解析ソフトDr.SPSSを用い,統計学的有意水準を5%とした.
【結果】令和3年12月において利用者の平均年齢は88.6±6.1歳,要介護度は要介護1:6名,要介護2:7名,要介護3:6名,要介護4:1名であった.デイサービス利用期間は平均で44.9±15.7ヵ月であった.令和2年において2名介護度が上がり,令和3年において1名要介護度が上がった.令和2年6月と12月のBIの比較は有意に低下したが,令和3年6月と12月のBIの比較に有意差は認めなかった.令和2年と令和3年の握力・体重は有意差を認めなかった.
【考察】今回,リハビリ専門職による個別での介入を増やすことで運動機能の維持・日常生活動作能力の維持を図れたと思われる.加えて入浴環境や居宅内の環境面へのアドバイスにより日常生活動作の自立度においては大きな変化なく経過できたと考えられる.
【今後の課題】今回,運動機能・日常生活動作能力において大きな低下は認めなかったが,排便・排尿コントロールができなくなってきた人がいた.また,介護度が上がった人のうち1名は長期臥床にともなう廃用による身体機能の低下,2名は認知機能の低下によるものと予測される.デイサービスは社会的交流を促す場ではあるが,デイサービス以外の外出・イベントの参加はなくなっている.認知機能低下は加速していくことが考えられるため認知機能の評価とさらなる介入を進めていきたい.