第56回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-1-6] ポスター:地域 1介護認定前の地域在住高齢者における性・年齢別の精神機能の比較

北澤 一樹12古川 智巳1三井 真一2平尾 一樹2岩谷 力1 (1長野保健医療大学保健科学部 作業療法学専攻,2群馬大学大学院保健学研究科)

【目的】
地域在住の65歳以上の要介護認定者を対象として,認定前3年間に遡り,基本チェックリスト(以下,KCL)を用いて精神機能の特徴を性・年代間で明らかにすること.
【方法】
対象者は,長野県飯山市在住の65歳以上で2019年度に介護保険の認定を受けた344名(男性152名(平均年齢83.2歳,SD7.2歳),女性175名(平均年齢85.2歳,SD6.5歳),欠損17名)である.KCLは,要支援・要介護状態となる危険性の高い高齢者を選定するために厚生労働省が作成した自記式質問表であり,IADL5問,運動機能5問,栄養2問,口腔機能2問,認知機能3問,うつ5問の計25問の設問に「はい」「いいえ」で回答し,ネガティブな回答を1点,ポジティブな回答を0点とし,得点が高いほど生活機能が低下していることを示す.「うつ」に関する質問項目は,ここ2週間で「毎日の生活に充実感がない」,「これまで楽しんでやれたことが楽しめなくなった」,「以前は楽にできていたことが今ではおっくうになった」,「自分が役に立つ人間だとは思えない」,「わけもなくつかれたような感じがする」の5項目である. KCLの調査は,飯山市が居住地区の隣組長を通じて配布・回収を行った.解析は,KCLのうつ5項目への回答と性・年齢階級別(65-69歳,70-74歳,75-79歳,80-84歳,85-89歳,90歳以上)のクロス表を2016〜2018年まで1年ごとに作成し,各設問へのネガティブな回答をした者の全回答者に占める割合を求め,χ2検定および残差分析により介護認定を受ける前3年間における「うつ」に関する設問の性・年齢階級別に比較した.また,3年間のうつ5項目の得点性・年齢階級別での比較には,kruskal-Wallis検定を用いた.本研究は,長野保健医療大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した.(承認No2020-4)
【結果】
 うつ5項目の合計得点で性・年齢階級別に有意差は認めなかった.また,3年間の変化を性・年齢階級別に見ると,性別での比較は有意差を認めなかったが,年齢階級別での比較では90歳以上で2016年と2018年の得点で有意に得点が悪化した(p=0.04).
次に,うつ5項目の各設問における3年間のχ2検定の結果は,性別でみると,2017年と2018年で「毎日の生活に充実感がない」の設問に有意差を認めた(それぞれp=0.044,0.027,Cramer V=0.124,0.144).残差分析では,いずれも男性の方がネガティブな回答が多かった.年齢階級別の比較では,2018年でのみ「わけもなくつかれたような感じがする」の設問で有意差を認めた(p=0.020,Cramer V=0.236).残差分析では,75-79歳ではポジティブな回答が多く,90歳以上ではネガティブな回答が多かった.
【考察】
 要介護認定を受ける前3年間では,90歳以上であると精神機能の変化を認めたが,性別では有意な差を認めなかった.介護認定を受ける前3年間のKCLのうつ5項目は,介護認定への影響が少ない可能性が考えられた.しかし,男性では「毎日の生活に充実感がない」の設問にネガティブな回答をする者が多かったことを踏まえると,うつ5項目の得点だけでなく各設問にも注目する必要がある.