第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-1-7] ポスター:地域 1パーキンソン病者の通いの場における情報交換の満足度と時間および人数設定との関係

活動後アンケートを通して

吉田 円香1石山 大介1秦 若菜2大森 圭貢3柴 喜崇4 (1日本医科大学付属病院リハビリテーション科,2北里大学 医療衛生学部,3湘南医療大学 保健医療学部,4福島県立医科大学 保健科学部)

【はじめに】パーキンソン病(Parkinson’s Disease: PD)者は重症化予防・健康増進が課題となる.PD者では,疾患や生活の情報を得ることが重要とされ,疾患に関する知識の向上や教育は,自己管理能力に寄与する (Daley, 2012).近年では地域における通いの場の介護予防効果が報告されており(Yamada, 2017),その内容には当事者間の情報交換が含まれることが多い.そのため,PD者でも通いの場における情報交換の健康増進効果が推察されるが,活動内容や参加人数が変化する中で効果的な運営方法を検討した報告はみられない.そこで,本研究の目的はPD者における通いの場での情報交換に着目し,その満足度について活動内容や参加人数が及ぼす影響を検討することとした.
【方法】デザインは後方視的観察研究である.研究対象は,2019年1月〜2021年5月に実施された総所要時間が約2時間の健康増進活動(PD Place会)に参加したPD者であり,当日の内容に対するアンケートを活動の最後に調査した.活動内容は,①体調確認,②参加者同士での情報交換,③準備体操,④発声と口腔の運動,⑤ダンスや太極拳などの5項目であり,リハビリテーション専門職及びインストラクターとの協働により月1回の頻度で運営された.アンケートは各項目(①~⑤)の満足度に加えて会への参加継続意思を5段階で聴取するとともに,会に対する意見を自由記載にて聴取した.得られた結果から, (1)各回のアンケートにおける情報交換の満足度,会への参加継続意思,自由記載の回答,(2)各回の参加人数,(3)情報交換の形式の変更点を抽出した.分析は,自由記載の回答を活動内容ごとに分類し集計した.また,会への参加継続意思にて最高段階「続けたい」を選択した者の割合と参加人数との関係をスピアマンの順位相関係数にて検討した.さらに,情報交換の満足度にて最高段階「満足」を選択した者の割合の経時的な変化を検討した.北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号2018-019-2).
【結果】対象は27名(平均年齢74.3歳,女性44.4%)であった.計15回における平均参加人数は5.7±3.3人であり,回収されたアンケートは計86件であった.自由記載の回答数は計45件で,情報交換への意見が14件と最多であった.また,参加継続意思と参加人数との相関係数は0.87(p<.001)であった.情報交換における「満足」の割合(平均42.6±16.4%)は情報交換の形式を変化させた際に増加し,情報交換の時間(約20分)を新設した回以降では,設ける前(3回目:20.0%)と比較して経時的な増加(4回目:50.0%,5回目:66.7%)を認めた.また,1グループ10人以上で実施した場合(10回目:20.0%)よりも,1グループ5~6人の少人数設定にて実施した場合(11回目:50.0%)で高値であった.
【考察】自由記載の回答は情報交換に関するものが最も多く,情報交換の満足度は時間を設けることにより増加したため,PD者の多くは情報交換に関心があることが推察された.PD者ではピアサポートが自己効力感や社会的つながりを強めると報告されており(Claesson, 2019),本研究対象のPD者でもこれらの効果が反映された可能性があった.また,参加人数と会への参加継続意思との間には,正の相関関係が認められたが,参加人数が増加した場合における情報交換の満足度は,少人数(5~6人)にグループ化して実施した場合により高い傾向があった.このような少人数設定は,PD者での介入効果を示した教育プログラム(Tennigkeit, 2021)でも用いられており,先行研究を支持するものであった.
 PD者が満足する情報交換には,その時間の確保および人数設定が重要となる可能性が示唆された.