第56回日本作業療法学会

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[PN-8] ポスター:地域 8

2022年9月17日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-8-6] ポスター:地域 8多職種で連携する通所型サービスCの参加により,抑うつ状態から社会参加につながった一症例

久保田 奈美1由利 禄巳2節安 政希3 (1大阪市浪速区社会福祉協議会,2森ノ宮医療大学,3大阪府作業療法士会)

【序論】我々は大阪府和泉市の通所型サービスC(以下,通所C)において,由利らが開発した「生活目標設定手法」を導入した多職種連携支援を実践している.今回,通所Cにおいて地域活動や散歩に行かなくなった高齢者を担当した.本氏はかかりつけ医の勧めで地域包括支援センター(以下,包括)に相談し通所Cの参加に至り,多職種連携支援から通所C終了後に地域活動に繋がったので報告する.
【症例紹介】80代後半独居女性,8年前に次男の自死と2年前に夫の死去を経験し,現在は遠方に住む長男嫁から時々連絡がある.要支援1(介護サービス未利用),高血圧とC型肝炎,胸痛の訴えがある.地域の体操等には下肢のだるさがあると参加せず,掃除と調理に困難さがあった.ケアマネジャー(以下,CM)が立案した介護予防ケアプランの目標(以下,プラン目標)は「体操などに参加を続けていける」であった.
【方法】通所Cは週1回120分(全12回)行う.主な指導・評価は健康運動指導士・栄養士・歯科衛生士が行い,作業療法士(以下,OT)は1回目と11回目の評価時に面接で目標設定を行い,取り組み課題の具体化等を行う.同日開催の関係多職種によるカンファレンス(以下,CC)で生活目標や支援課題・方法を共有し,1回目は通所C利用中の専門職訪問指導の要否を11回目は終了後の支援方針を検討する.本人へは文書による説明と同意を得て行った.
【1回目の面接・CC】家事は何とか可能だが日中はテレビを見て過ごし,夕方には死ぬ時を考え包括に電話するなど不活発な生活とうつ状態が懸念された.通所Cは「楽しみ」と話し,おしゃれをして参加していた.生活活動の価値観の確認では,プラン目標の体操参加は自らしたい願望(以下,願望)はあるが,しなければならない義務感(以下,義務)はなかった.テレビや散歩,家事に願望はなく義務のみであった.通所Cでの目標(以下,短期目標)を「毎日25分の散歩に行く」と合意し実現度5/10満足度3/10,短期目標の意味は「息子が遠方で頼る人がいないから生きている限り自分で生活をしたい」であった.目標達成に向けてまずは「毎日少しでも外に出る時間を作る」ことを指導した.CCでは抑うつ傾向あり,足のだるさなど身体面の不調があると外出しなくなるが,改善したい意欲が感じられること,運動・口腔の評価から下肢筋力低下,飲み込み力低下があることを共有した.専門職訪問は自宅での運動量や家事動作の指導に加え,心理面の不安軽減を目的にOTが行なった.
【11回目の面接とCC】テレビの視聴時間が減り散歩が日課になり,短期目標の実現度9/10満足度9/10となった.「生きるのが嫌と思っていたが,元気で生きたいと思えるようになった.家でじっとしていても精神的に良くない.公が長生きしなさいと言ってくれているから,卑下せず長生きしていいと思えるようになった.」と話され,抑うつ傾向の改善も窺えた.また下腿以遠の浮腫も軽減した.CCでは教室に楽しそうに参加しており,気分の変動はあるが外出機会の増加があることを共有した.終了後はCMの支援により地域の体操へ繋げる方針となった.
【考察】本氏は近親者との死別後,社会とのつながりが希薄になり,不活発な生活から身体機能が低下し,老年期の抑うつ状態であったと考えられた.本人にとって重要な生活目標と意味を理解した支援により目標であった体操参加に繋がった.CMを中心とした支援が心の支えになり,本人が「支援を受けている」と認識できたのではないかと考える.通所Cは事業対象者・要支援者が対象になっているがその報告は少ない.今後に症例を重ねて効果的な連携支援について検討していきたい.